2023年6月13日火曜日

【小説】暴走している株ブログに思うこと~vol.169~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
Z:お疲れ
B:お疲れ
X:そういやZの相手はどうなってんだ
Z:どうなってるって?
X:ネットニュースになってただろ、これからどうすんだ
Z:どうしようかしらw
B:こないだ送った自宅の情報も拡散するの?
X:自宅を特定したのか
Z:拡散しないわよ、念のため特定してもらっただけw
B:YがZに伝えて欲しいって
Z:?
B:相手の自宅がある校区は人気があるんだってw
Z:どうでもいいわよ、そんな情報
X:さすがYだな、バカにもほどがある
Z:wwwwwwwwww
Y:お疲れw
Z:お疲れ
X:お疲れ
B:お疲れ
Z:噂をすれば来たわね
Y:?
Z:XがYの悪口いってたわよ
X:おいおい
Z:Yの情報は役に立たないってw
X:おいおい
Y:Xって誰だっけ?
X:おいおい
Y:日本一頭の回転が遅い奴?
X:おいおい
Y:世界一頭の回転が遅い奴?
X:おいおい
Y:宇宙一頭の回転が遅い奴?
X:てめええええええええええええええええ
Z:wwwwwwwwww
B:w
Z:Yの相手はどうなってるの
Y:どうなってるんだろw
X:Yの頭の回転は止まってるのかもな
Z:wwwwwwwwww
X:さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
Y:でわでわ寝ます、おやすみw
Z:私も寝るわ、おやすみ
B:おやすみ

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「まとめ屋の資料ありがとうございました」、声をかけた男がいう。
「たいした資料じゃない」、声をかけられた男がいう。
「まさか、WSI訴訟でつながっていたとは驚きでした」、声をかけた男がいう。
「俺も最初に知ったときは驚いたよ」、声をかけられた男がいう。
「彼らは何のために、こんなことしているんでしょうね?」、声をかけた男がいう。
「どういう意味だ」、声をかけられた男がいう。
「自分たちには何の得もないじゃないですか」、声をかけた男がいう。
「彼らは何が得かなんて考えていないんだろ」、声をかけられた男がいう。
「自分には理解できないです」、声をかけた男がいう。
「そのうちわかるよ、あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

「WSI訴訟」は、WSI(ワールド株式投資)による投資詐欺の民事訴訟。
「プロ向けファンド」は、主として、証券会社や銀行、投資会社などの「プロ投資家」(適格機関投資家)に売るために組成されたファンドをいい、広く一般消費者に向けて売られることは想定していなかった。そのため、これまで「プロ向けファンド」の運用・販売を行う事業者は、「登録」よりも条件や規制の緩い金融庁への「届出」で済み、不当行為に関する行政処分は定められてなかった。

WSIは「プロ向けファンド」を悪用。「当社は金融庁に届出をした業者です」「当社はプロ投資家を対象としたプロ向けファンドを運用している業者です」などと、主にインターネットで消費者を勧誘して、多くの被害をもたらした。
「プロ向けファンド」が一般消費者に向けて売られることは想定していなかったため、WSIへの損害賠償請求は難しいと思われていた。だが、被害者である原告が、WSIの不法行為を立証したことにより、満額に近い請求額が認められた。

「WSI訴訟」以降、「プロ向けファンド」を悪用した投資詐欺を防ぐため、金融商品取引法(金商法)の見直しが行われ、この改正金商法は2015年5月27日に成立し、2016年3月1日に施行されている。
これにより、「プロ向けファンド」を一定の要件を満たさない一般の投資家には売ることが禁止され、届出業者に対する規制が厳しくなり、問題のある届出業者には業務停止命令を含む行政処分が行えるようになっている。
「予告犯」筒井哲也氏

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