2023年6月19日月曜日

銘柄を明かさない理由R001 女王の生誕(前編)

自身はオリジナル小説「銘柄を明かさない理由R」を執筆している。
「銘柄を明かさない理由R」は、5人の無敗の相場師と取り巻く人々の物語。
先日、登場人物の1人から、続きを書いたらと催促があった。
構想がまとまっていないと答えると、それならとある提案をしてもらったw

ある提案は、今まで書いた内容のリニューアル。
具体的には、基本的なあらすじは変えずに加筆修正を行う。
数少ない読者の暇つぶしになれば、うれしく思う。
では、「銘柄を明かさない理由R 第01章 暴落のベラドンナ」をお届けするw
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第001話 女王の生誕(前編)

スイスで最も美しい教会があるといわれる街に、1軒の豪邸があった。
豪邸は広大な敷地の中にあり、豪邸のすぐ近くには、教会が設けられていた。
教会ではステンドグラスから降り注ぐ朝日の中、黒髪の女性が祈りを捧げていた。
祈りを捧げていた黒髪の若い女性、スプリングベルは祈りを終えると、豪邸へ向かった。

スプリングベルは、スイスで屈指のプライベートバンカーだった。
徹底した顧客情報の守秘と堅実な資産運用は、多くの顧客を獲得していた。
顧客の中には、各国政財界の要人や著名人がいた。
スプリングベルは、朝の祈りの後に朝食をとり、資産運用の指示を行っていた。

「おはようございます、スプリングベル様、すでに朝食の準備は整っております」
黒服を着た初老の男性執事が、玄関の前で恭しくいう。
「おはよう、いつもありがとう」
スプリングベルはいうと、男性執事が開けた玄関ドアを通り、ダイニングへ向かった。

スプリングベルと初老の男性執事は、ダイニングに通じる重厚な木製扉の前に着いた。
扉の両脇には、黒服を着た若い男性執事が2人いた。
2人の男性執事は、スプリングベルが歩みを止めることがないよう、扉を開いた。
スプリングベルは「ありがとう」と2人の男性執事にいうと、ダイニングの中へ入った。

重厚な木製扉の中の窓のないダイニングは、天井から床まで白い空間だった。
ダイニングの中央には、空間と同じ白いテーブルと椅子があった。
初老の男性執事が椅子を引くと、スプリングベルは静かに座った。
やがて、別の男性執事が、白いワゴンに乗せた朝食を運んできた。

フルコースの朝食を、スプリングベルは時間をかけて、ゆっくりと食べ終えた。
男性執事たちの片付けが終わると、初老の男性執事がモニターのスイッチを入れた。
ブンという音と共に、壁一面がモニターに切り替わり、多くの映像が映し出された。
世界の市況に、先進国の主要メディアの報道番組などだった。

モニターから音声は流れておらず、ダイニングの静けさは保たれていた。
スプリングベルはキャスターの表情やテロップから、報道番組の情報を読み取っていた。
また、めまぐるしく変動する世界の市況から、各国の相場の動きも読み取っていた。
いつもより時間が長いな、初老の男性執事は思ったが、口には出さなかった。

「ありがとう、もういいわ」、ようやくスプリングベルがいった。
初老の男性執事は、モニターのスイッチを切った
問題はいつ起こるのか、スプリングベルは考えていた。
静かに時が流れる中、初老の男性執事スプリングベルの指示を待っていた。

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