2023年5月11日木曜日

【小説】暴走している株ブログに思うこと~vol.129~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

Y:お疲れって誰もいないw
Y:落ちるかw
B:お疲れ
Y:お疲れw
B:ひとつ聞いてもいい
Y:?
B:前にも聞いたけど
B:11年前に個人がある大企業を訴えたって話
B:訴えたのは、Yでしょ
Y:前にも答えたけど
Y:11年前は小学生だったw
B:w
B:質問変えるね
B:今まで訴訟したことはある?
Y:ないことはないw
B:負けたことはある?
Y:和解は敗け?
B:和解は引き分けかな
Y:じゃあ、ないw
B:最も大きな金額の訴訟をしたのは?
Y:大阪かなw
B:ありがとw
Y:眠いので落ちます、おやすみw
B:おやすみ

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「ああ」、声をかけられた男がPCの画面から目を離さずにいう。
「また、まとめ屋のサイト観てたんですか」、声をかけた男が聞く。
WSI訴訟は東京だよな」、声をかけられた男がいう。
「そうですよ、それが何か」、声をかけた男がいう。
「どこで始まったんだっけ」、声をかけられた男がいう。
「大阪だったような気がします」、声をかけた男がいう。
「それだな」、声をかけられた男がいう。
「どうしたんですか」、声をかけた男がいう。
「調べることができた、あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

「WSI訴訟」は、WSI(ワールド株式投資)による投資詐欺の民事訴訟。
「プロ向けファンド」は、主として、証券会社や銀行、投資会社などの「プロ投資家」(適格機関投資家)に売るために組成されたファンドをいい、広く一般消費者に向けて売られることは想定していなかった。そのため、これまで「プロ向けファンド」の運用・販売を行う事業者は、「登録」よりも条件や規制の緩い金融庁への「届出」で済み、不当行為に関する行政処分は定められてなかった。
WSIは「プロ向けファンド」を悪用。「当社は金融庁に届出をした業者です」「当社はプロ投資家を対象としたプロ向けファンドを運用している業者です」などと、主にインターネットで消費者を勧誘して、多くの被害をもたらした。
「WSI訴訟」以降、「プロ向けファンド」を悪用した投資詐欺を防ぐため、金融商品取引法(金商法)の見直しが行われ、この改正金商法は2015年5月27日に成立し、2016年3月1日に施行されている。
これにより、「プロ向けファンド」を一定の要件を満たさない一般の投資家には売ることが禁止され、届出業者に対する規制が厳しくなり、問題のある届出業者には業務停止命令を含む行政処分が行えるようになっている。
「予告犯」筒井哲也氏

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