2022年2月13日日曜日

銘柄を明かさない理由R454 伝説の相場師(後編)

第454話 伝説の相場師(後編)

「年寄りの頼みとあっても、聞いてはもらえぬか」、勝利が朱蘭と宗矩にいう。
「お引き取りいただけますでしょうか」、宗矩が勝利にいう。
「仕方ないのう、出てきてくれるか」、勝利が横を向いて、襖の陰に声をかける。
勝利の横の襖がさらに開かれると、スーツ姿のクジョウレイコが現れた。

「東京の証券会社から来たクジョウと申します。
会長のジツオウジから、本件を収拾するよう命ぜられました。
今までのやりとりは、大蔵様にもお聞きいただいております」
クジョウが両手で持つノートPCには、病室のベッドに横たわる大蔵が映っていた。

「大蔵様の病室には、同じ会社から来たテンマがいます。
テンマによると、大蔵様が仰りたいことがあるそうなので、お聞きください」
ノートPCに、スーツ姿のテンマリナが現れると、大蔵の口元に耳を近づけた。
「ええええ~っ」、しばらく聞いていたテンマが驚いて声を発した。

「リーダー、衝撃の事実がわかりました」、テンマがカメラ目線でいう。
「何だ、報告しろ」、クジョウがいう。
「朱蘭さんの誕生日の夜に現れた本間宗久さんは、大蔵さんとのことです。
朱蘭さんは、お兄様を亡くされてから、元気のない日々を過ごされていたそうです。

そんな朱蘭さんに目標を与えるため、大蔵さんが『本間の荒行』を命じたんだそうです」
「まさか、俺に『本間の荒行』を命じたのも」、宗矩がいう。
「それも大蔵さんだそうです、宗矩さんに地元に残って欲しいという思いからだそうです」
テンマがエアマイクを手にしながら、カメラに近づいていう。

テンちゃん、エアマイクはいらんやろ、テンマと交際中のコウヘイは思った。
「以上がテンマからの報告です、次に東京からです」
クジョウがノートPCのキーボードを叩くと、画面が切り替わった。
会社の社長室らしき場所に、グレーのスーツ姿の2人の男が立っていた。

1人は、ロマンスグレーの髪をオールバックにした巨躯の高齢男性だった。
1人は、ノンフレーム眼鏡をかけた細身の40代らしき男性だった。
「クジョウとテンマがいる証券会社の会長をしているジツオウジと申します。
この方は日本一の株屋の社長、ムラノキョウスケ氏です」、巨躯のジツオウジがいう。

「国内でしのぎを削ったのは、過去の時代の話です。
グローバルな時代ですが、幸いなことに、我が国には偉大なる先人たちがおられます。
今こそ国内勢が一丸となって、海外勢に立ち向かおうではありませんか」
カメラ目線のムラノが、"謁見の間"にいる全員に穏やかな口調で語りかけた。

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