2022年2月1日火曜日

銘柄を明かさない理由R443 先手必勝(前編)

「銘柄を明かさない理由R」は、5人の無敗の相場師と彼らを取り巻く人々の物語である。
5人の無敗の相場師は、無敗のテン(10)ことテンマリナ。
無敗のジャック(J)ことジョウシマユウイチ、無敗のクイーン(Q)ことクジョウレイコ。
無敗のキング(K)ことジツオウジコウゾウ、無敗のエース(A)ことアマネオトヤ。

現在、新シリーズの「出羽の天狗編」を執筆中である。
「出羽の天狗編」では、東の本間と西の淀屋の戦いが物語の軸となる。
両家の争いも、いよいよ佳境に入ろうとしている。
では、「出羽の天狗編 第33章 伝説の相場師」をお届けするw
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第443話 先手必勝(前編)

キミシマユウトがキサラギミレイに『天狗』の説明をしている頃。
「出羽の天狗」こと本間宗矩は、山形県酒田市郊外の実家にある蔵の2階にいた。
晃一に、ヨドヤタエの弱みを調べてくれと頼んでいるが、今日も報告がない。
さすがの晃一も手こずっているのかもしれないな。

朱蘭様の指示を受けてから、月日が経っている。
ヨドヤタエをこちら側につける策は、当初の予定にはなかったからな。
そろそろ本丸であるヨドヤコウヘイに、仕掛けるときかもしれないな。
宗矩は『天狗』に眠るようにいうと、1階に降りて、蔵の明かりを消した。

「本間さ~ん、書留です、サインか、ハンコいただけますか」
蔵から出て、母屋の縁側に向かう宗矩に声がかけられた。
宗矩が声がした方に目をやると、玄関先にいる郵便局員が宗矩を見ていた。
今日はみんな予定があるっていってたな、宗矩は「わかりました」と答えた。

宗矩は縁側から屋内に入ると、玄関へ行き、鍵を開けた。
「こちらにサインか、ハンコをお願いします」、郵便局員が受領証を出していう。
「じゃ、サインで」、受領証と筆記具を受け取った宗矩はサインした。
「お届け物はこちらです」、受領証と筆記具を受け取った郵便局員が白の封筒を差し出す。

「ご苦労様です」、宗矩が封筒を受け取ると、郵便局員は次の配達先へ向かった。
宗矩が宛名を見ると、自分あてだった。
いったい誰からだ、裏を見て、送り主を確認した宗矩は目を疑った。
送り主は、ヨドヤコウヘイだった。

なぜ、ヨドヤコウヘイが俺の住所を知っているんだ、いったい何を送ってきたんだ。
宗矩は急いで居間へ行くと、ペーパーナイフを手に取り、ソファに座りこんだ。
封筒とペーパーナイフを持つ手は、小刻みに震えていた。
落ち着け、封筒の中身を確認するだけだ、宗矩は自分に言い聞かせた。

待てよ、こちらは仕掛けてもいないんだ、敵意のある封筒を送ってくるわけがない。
見たところ封筒には、おかしなところはない。
だが、家には俺しかいない、何かあったときのために証拠を残す必要がある。
宗矩はテーブルに封筒とペーパーナイフを置くと、ソファから立ち上がった。

30分後、三脚にセットしたスマホが録画する中、宗矩はソファに座った。
「今からヨドヤコウヘイから届いた封筒を開けます」、宗矩がスマホに向かっていう。
ペーパーナイフを使って慎重に開封すると、中には1枚の便せんがはいっていた。
便せんには「来週月曜の午後、そちらに伺うのでよろしく」とだけ書いてあった。

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