2024年11月26日火曜日

【小説】銘柄を明かさない理由R048 バリュー投資同好会(後編)

第048話 バリュー投資同好会(後編)

2009(平成21)年4月、東京都内にあるワンルームマンション。
帰宅したアマネオトヤは、室内着に着替えると、椅子に座った。
机の引き出しを開けると、家計管理用のノートを取り出した、
帰りにATMで記帳した通帳を開くと、入金額と引き落とし額をノートに写し始めた。

入金は、不動産会社から入金されたコインパーキングの収益だった。
引き落としは、マンションの家賃、電気や水道などの光熱費、土地の税金だった。
卒業までの学費は、祖父が支払ってくれることになっていた。
卒業までに必要な生活費を計算すると、600万円ほどが必要だと思った。

オトヤの資産は、コインパーキングにしている土地と通帳にある現金だった。
土地には住宅ローンによる抵当権があったが、保険金で完済したことで抹消されていた。
現金は、父親の生命保険や自宅の火災保険で支払われた保険金の残金。
あと、今までのコインパーキングからの収益で、1,000万円超あった。

現金が1,000万円超なので、投資に使えるのは400万円になる。
成人して証券会社に取引口座を開設したら、400万円入金することにした。
それまでに、バリュー投資同好会で投資のことを学ばせてもらおう。
入会したいと伝えることを決めたオトヤはノートを閉じた。

バリュー投資同好会の魚沼と青柳は、千葉県出身で同じ中学に通っていた。
魚沼は、地主の祖父に、幼少期から生前贈与してもらっていた。
青柳は、上場企業に勤める父親に、高校入学時から生前贈与してもらっていた。
大学で再会した二人は、生前贈与された資産をどうするか話し合った。

何日もかけて話し合った結果、株式投資で運用することを決めた。
二人は多くの株に関する書籍を読み、最適解はバリュー投資だと結論づけた。
だが、成人にならないと、証券会社に口座を開設することができない。
二人は成人になるまで、バリュー投資同好会を立ち上げ、研究を続けていた。

翌日、オトヤは魚沼と青柳に入会したいと伝え、快諾された。
幹事に任命されたオトヤは、投資について教わった。
その年に成人した魚沼と青柳は、証券会社に口座を開設し運用を始めた。
翌年、成人したオトヤも、証券会社に口座を開設し運用を始めた。

2010(平成22)年12月、大学の最寄り駅近くにある居酒屋。
「今年はお疲れ様でした!乾杯!」、バリュー投資同好会の打ち上げが行われた。
評価損益がプラスになった魚沼、青柳、オトヤの3人は、楽しいひと時を過ごした。
だが、彼らの評価損益がプラスになったのは、ビギナーズラックに過ぎなかった。
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次章予告

精神世界にある高天原の神殿では、三貴神による会議が行われていた。
円卓には、羽衣をまとった最高神である天照大神(アマテラスオオミカミ)。
天照大神の弟神で夜を統べる月読命(ツクヨミ)。
同じく天照大神の弟神で武具を装着した建速須佐之男命(スサノオ)がいた。

「禍津日神(マガツカヒノカミ)が現れたらしいな」、アマテラスがいう。
「昨夜、中部地方で目撃したとの報告が上がっております」、ツクヨミがいう。
「厄介なところに現れおったな」、スサノオがいう。
「ツクヨミの予測を述べよ」、アマテラスがいう。

「禍津日神は、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の復活を図るはずです。
八岐大蛇は、八つの頭を分けて、全国各地に封印しております。
復活させるため、分かれている頭を集めて回るでしょう。
頭が揃った地で、復活の儀を執り行うものと思われます」、ツクヨミがいう。

「スサノオの予測を述べよ」、アマテラスがいう。
「中部地方に現れたのであれば、北上してから南下するルート。
あるいは、南下してから北上するルートが考えられます。
復活の地は前者の場合は九州、後者の場合は東北になろうかと」、スサノオがいう。

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