第046話 バリュー投資同好会(前編)
2009(平成21)年4月、東京。
アマネオトヤは、大学の近くにあるハンバーガーショップに向かっていた。
"バリュー投資同好会"の入会説明会に参加するためだった。
昨日、大学構内で手渡されたチラシには"誰でも歓迎"、"投資経験不問"の文字があった。
ハンバーガーショップに着くと、開催場所と書かれていた2階へ上がった。
飲食スペースの2階には、学校帰りの女子高生が多くいた。
店内を見渡すと、壁際のテーブル席にチラシを配っていた2人組の男子学生がいた。
白の長袖シャツと紺のベストを着た2人は向い合せに座り、話し込んでいるようだった。
オトヤは2人のテーブル席に行くと、「お待たせしてすいません」といった。
会話を止めた2人は、オトヤを見上げると固まった。
2人のテーブルには、飲みかけのドリンクがあった。
「私もドリンク買ってきますね」、オトヤはいい、階段へ向かった。
「チャーリー、席を空けるんだ」、壁際の席の眼鏡をかけた学生がいった。
「わかった、ウォーレン」、チャーリーと呼ばれた学生が、壁際の席に移動した。
「入会希望者だよな」、ウォーレンと呼ばれた学生がいう。
「チラシを見て来たんだと思う」、チャーリーと呼ばれた学生がいう。
「緊張するな」、ウォーレンと呼ばれた学生がいう。
「僕も」、チャーリーと呼ばれた学生がいう。
ドリンクを買ったオトヤが2階に上がると、2人が壁際の席に座っているのが見えた。
背筋を伸ばした2人は両手を膝において、オトヤを見ていた。
オトヤがテーブル席まで来ると、2人は同時に立ち上がった。
「入会説明会へようこそ、お座りください」、ウォーレンと呼ばれた学生がいう。
「よろしくお願いします」、オトヤは軽く一礼し、2人の向かいの席に座った。
オトヤが座ると、2人も座った。
誰も何もいわないので、気まずい雰囲気になった。
「ウォーレン」、チャーリーと呼ばれた学生が小声でいう。
「バリュー投資同好会の会長、魚沼卓也(うおぬまたくや)です。
経済学部の2回生です、ウォーレンと呼んでください。
横にいるのは副会長の青柳正(あおやぎただし)君です。
彼も経済学部の2回生です、チャーリーと呼んでください。
早速ですが、お名前と学部を教えていただけますか」、ウォーレンがいう。
「アマネオトヤです、経済学部の1回生です」、オトヤが答えた。
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