第044話 神の血族(中編)
神が先祖?神の子どもは神だろ、オトヤは思った。
「人間には生まれながらにして、様々な能力が備わっている。
ほとんどの人間はその能力に気づくことなく、生涯を終える。
その能力に気づいた者が神と呼ばれ、あがめられてきた」、長髪の男がいう。
マンガやアニメにありそうな話だな、オトヤは思った。
「自らが持つ能力に気づいた俊彦は、祖先が天津日子根命であることを知った。
それ以来、天津日子根命を祀る桑名宗社に寄付を行ってきた。
信じられないなら、桑名宗社へ行って、寄付の記録を確認するがよい」、長髪の男がいう。
今週の土曜にでも行ってみるか、オトヤは思った。
「行くときに賽銭を忘れるな、お守りや御朱印帳も買えよ」、長髪の男がいった。
目が覚めたオトヤは、やけに具体的な夢だったなと思った。
その日、登校したオトヤは、図書室で天津日子根命について調べた。
天津日子根命は、日本神話に登場する神。
「古事記」では天津日子根命、「日本書紀」では天津彦根命と表記されている。
天津日子は「天の太陽の子」の意で、根は接尾辞とされている。
川内国造・茨木国造・筑波国造・師長国造など、多くの氏族の祖とされている。
日本神話における最高神が天照大神(アマテラス)。
天照大神の弟が建速須佐之男命(スサノオ)だった。
姉弟である天照大神と建速須佐之男命が誓約を行った。
その際、天照大神の玉から男柱5柱が生まれたが、1柱が天津日子根命だった。
天津日子根命は、下記の神社などで祭神として祀られていた。
・三重県桑名市:多度大社、桑名宗社(春日大社)、額田神社。
・滋賀県東近江市:竹田神社。
・京都府亀岡市:出雲大神宮。
その週の土曜日、オトヤは桑名市にある桑名宗社を訪れた。
参拝した後、父親の俊彦が寄付を行っていたか、確認してもらった。
俊彦は20年前から亡くなるまでの間、毎年、多額の寄付を行っていた。
寄付が事実だったことを確認したオトヤは、お守りと御朱印帳を買って帰った。
その日の夜、オトヤは寝るためにベッドに入った。
目の前の霧が晴れてくると、神社が現れた。
目をこらすと、賽銭箱に腰掛け、腕組みをしている天津日子根命がいた。
「いった通りだろう」、ドヤ顔の天津日子根命がいった。
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