2024年11月24日日曜日

【小説】銘柄を明かさない理由R045 神の血族(後編)

第045話 神の血族(後編)

オトヤは天津日子根命に聞きたいことがあった。
聞きたいことは、自宅に火を放った犯人の動機だった。
「動機は、犯人が供述した通りじゃ。
夢に出てくる男の家を見つけたので火を放ったじゃ。

火を放った男は、当時、連日のように報道されていた連続強盗事件の犯人だった。
俊彦は持ち前の能力を使い、犯人の氏名や住所を特定した。
だが、警察へ知らせようにも、証拠がないので信じてもらえない。
犯人が見る夢に現れては、悔い改めて自首するよう、諭しておったんじゃ。

ある日、犯人の男は、写真屋に飾ってある家族写真に俊彦がいるのを見つけた。
写真屋の主人に、俊彦のことを教えてもらい、自宅を特定した。
ガソリンを入れた携行缶を用意した男は、寝静まった頃を見計らって家を出た。
俊彦の自宅に着くと、ガソリンをまき、火を放ったんじゃ」、天津日子根命がいう。

そんな理由で火を放ったのか、オトヤは思った。
「家族は肉体が失われただけで、魂は消滅しとらん。
前世の記憶はなくなるが、いずれ転生するはずじゃ。
家族も前向きに生きて欲しいと思っとるはずじゃ」、天津日子根命がいう。

いいたいことはわかる、だが割り切れない、オトヤは思った。
しばらくの間、黙っていた天津日子根命が口を開いた。
「前向きに生きてもらうため、本題の話をするとしよう。
俊彦の代わりに、桑名宗社に寄付してくれんか」

今、ある貯金を寄付するのか、オトヤは思った。
「今、ある金を寄付しろとはいわん。
これから稼ぐ金の一部を寄付して欲しいんじゃ」、天津日子根命がいう。
バイトして稼ぐ金の一部か、それならできるかもしれない、オトヤは思った。

「バイトではなく、株への投資で稼ぐんじゃ」、天津日子根命がいう。
株なんてやったことがない、オトヤは思った。
「気づいていないようだが、オトヤには、あらゆるものを引き寄せられる能力がある。
その能力があれば、株への投資で稼げるはずじゃ」、天津日子根命がいった。

髪を乾かし終わったオトヤは電気を消し、ベッドに入った。
明日から通う大学には、投資同好会や投資サークルがある。
話を聞いて、よさそうなところがあれば、入れてもらおう。
後に証券会社から"無敗のエース"と呼ばれることになるアマネオトヤは思った。

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