2024年3月26日火曜日

【小説】まとめ屋~vol.366~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
X:って誰もいねえのか
B:おつかれ
X:いたのか
B:さっきまでみんないたよ
X:あいつら俺を避けてんな
B:それはないと思うw
X:何を話してたんだ
B:Yの相手の件で盛り上がってたよ
X:あのバカが証人になるかもっていってたやつか
B:支援する人の弁護士から連絡があったんだって
X:どんな連絡だ
B:相手の要求がわかったらしいよ
X:要求は何だったんだ
B:謝罪文の公開と損害賠償を求めているらしい
B:ただ、損害賠償の額がとんでもなく高かったらしいよ
X:どれくらい高かったんだ
B:相場の20倍だって
X:ふっかけてきたな
B:Yはスラップじゃないかっていってた
X:何だそれ
B:認められないのに、嫌がらせ目的で起こす訴訟
B:Yの推測だけど、可能性はあると思う
X:あのバカ、大丈夫か
B:想定の範囲内だったらしいよw
X:いまだに嫌がらせのコメントとかされてんだろ
B:Yにとっては、いつものことだけどねw
X:つきあいきれねえな、さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
B:おやすみ

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「また、まとめ屋のサイト見てたんですか」、声をかけた男がいう。
「たまに参考になる情報があるからな」、声をかけられた男がいう。
「Zの相手の新証言ですが、ウラがとれたようですね」、声をかけた男がいう。
「Zにとっては有力な証拠になるだろうな」、声をかけられた男がいう。
「相手も、当時の証拠が出てくるとは思わなかったでしょうね」、声をかけた男がいう。
「検察がどう判断するかだな」、声をかけられた男がいう。
「ですね」、声をかけた男がいう。
「あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

スラップ(SLAPP:strategic lawsuit against public participation)とは、訴訟の形態の一つである。金銭的余裕のある側が、裁判費用・時間消費・肉体的精神的疲労などを相手に負わせることを目的とし、最終的に敗訴・棄却されるであろう事例に「名誉毀損」と主張する加罰的・報復的訴訟を指す。特に金銭さえあれば、裁判が容易に起こせる民事訴訟において行われる。批判的言論威嚇目的訴訟などとも訳される。なお、アメリカの一部の州では、原告側へ「スラップ」ではないことの立証責任を課したり、スラップ提起そのものを禁止している。スラップ訴訟、口封じ訴訟、威圧訴訟とも言われる。
(「スラップ」Wikipediaより)
「予告犯」筒井哲也氏より
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ネットの誹謗中傷をなくすにはどうしたらよいかをテーマに書いています。
誹謗中傷された場合の法的手続きですが、費用対効果は決してよいとはいえません。
また、相手から虚偽告訴罪で訴えられる可能性もあります。
誹謗中傷されたら、やり返さずに弁護士に相談されることをオススメします。
相談すれば、どのような罪に問えるかなど、アドバイスしてもらえることが多いです。
「まとめ屋」の方法はリーガルチェックを受けていないため、行わないでくださいw

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