2022年1月17日月曜日

銘柄を明かさない理由R432 宣戦布告(中編)

第432話 宣戦布告(中編)

ジョウシマが大阪から戻った次の日の夕方。
ジョウシマは調査結果を報告するため、晃一が経営するコンサル会社を訪れていた。
コンサル会社の応接スペースに、晃一がやってきて、椅子に座るといった。
「早いですね、もう弱みがわかったのですか」

「かなりの確率で、弱みと思われることがありました」、ジョウシマがいう。
「いったい、どのような弱みですか」、晃一がいう。
「ヨドヤタエは、脱税している可能性があります」、ジョウシマがいう。
「具体的には、どのような脱税を」、晃一がいう。

「ヨドヤタエの家業は不動産業で、会社役員に次女の松子、三女の珠代がいます。
松子と珠代は役員なので、役員報酬を支払ったことになっています。
ですが、2人は結婚を機に、今は大阪から離れた土地で暮らしています。
おそらく、2人の勤務実態はないでしょう」、ジョウシマがいう。

「リモートワークもあるので、立証は困難ではありませんか」、晃一がいう。
「あと1つ、ヨドヤタエは個人の会社を使って、海外でも不動産事業を行っていました。
すでに海外からは撤退したようですが、売上げを過少申告している可能性があります。
どちらも、国税が動けば、事実が明らかになると思います」、ジョウシマがいう。

「脱税していることが、事実であれば、確かに弱みになります。
いったい、どうやって調べたのですか」、晃一がいう。
「ヨドヤタエとの会話から推測、謄本や決算書を確認しました」、ジョウシマがいう。
「ええっ、本人と話したのですか」、晃一が驚いていう。

「今までの経験から、調査をすれば、相手は調査されたことを知ります。
ヨドヤタエは、前回、自分が調査されたことを知っていました。
誰が調査を依頼したのか、探しているところでした」、ジョウシマがいう。
「まさか、私が依頼したことを話されたんじゃ」、晃一がいう。

「ご安心ください、守秘義務がありますので、あなたのことは話していません。
ですが、遅かれ早かれ、依頼したのは、あなただと知ることになるでしょう。
私が大阪から帰るとき、尾行されたくらいですからね。
なお、わかりやすい尾行だったので、途中でまいておきました」、ジョウシマがいう。

「そ、そんな」、晃一の顔から血の気が引き始めた。
「もし、よろしければ、調査の目的をお教えいただけないでしょうか。
もしかすると、お力になれるかもしれませんよ」
うなだれる晃一に、ジョウシマがいった。

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