2022年1月16日日曜日

銘柄を明かさない理由R431 宣戦布告(前編)

第431話 宣戦布告(前編)

ジョウシマがヨドヤタエと会った次の日の朝。
ジョウシマが宿泊する難波のビジネスホテルを見通せる位置に、北島という男がいた。
北島は、ヨドヤタエから依頼を受けた興信所の所長だった。
依頼内容は、ジョウシマに調査を依頼した依頼主を調べろだった。

時刻は8時を過ぎていた。
ホテルから、ボストンバッグを手にしたジョウシマが出てきた。
おっ、出てきたな、ジョウシマは調査会社らしいから、いつもより慎重にいかんとな。
北島は、最寄り駅の方向へ歩いていくジョウシマの尾行を始めた。

ジョウシマは地下鉄の改札を抜けると、新大阪行きの車両に乗った。
通勤客で混みあう中、北島は同じ車両に乗り込むことに成功した。
車両の中では、ジョウシマから離れた位置から、ジョウシマを観察していた。
淀屋橋駅に着くと、ジョウシマは周りの通勤客と下車した。

北島も、ジョウシマとは別の扉から下車した。
いったい、どこへ向かうんや。
北島は、地上へ出るエスカレーターへ向かうジョウシマを追った。
地上へ出たジョウシマは、大阪市役所の方向へ歩き始めた。

朝一で依頼主に報告するんちゃうやろな。
北島が見ていると、ジョウシマは大阪市役所の中へ入っていった。
何で、市役所に行くんや、憶えられるかもしれへんので、中には入られへんな。
北島は市役所の外で、ジョウシマを待つことにした。

小一時間ほどすると、市役所からジョウシマが出てきた。
やっと出てきた、尾行再開や、淀屋橋駅へ歩き出したジョウシマを、北島は追った。
ジョウシマは新大阪行きの車両に乗り、新大阪駅で下車した。
北島も同じ車両に乗り、新大阪駅で下車した。

新大阪駅で下車してから4時間後、ジョウシマと北島は東京行きの新幹線の中にいた。
北島の席は、ジョウシマの席のはるか後方だった。
新幹線が品川駅に近づくと、ジョウシマが席を立ち、前方の扉から出ていった。
上の棚にボストンバッグを置いたままなので、トイレにでも行くのか、北島は思った。

新幹線は品川駅に到着したあと、終点の東京駅へ発車した。
東京駅へ到着すると、北島以外の乗客は降りたが、ジョウシマは戻ってこなかった。
ま、まさか、北島は棚にあるジョウシマのボストンバッグを降ろすと、中を開けた。
見た目より軽いボストンバッグの中には、大量の丸めた新聞紙が詰め込まれていた。

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