2023年7月18日火曜日

【小説】暴走している株ブログに思うこと~vol.201~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
Z:お疲れ
X:Yは来ていないのか
Z:最近、忙しいみたいで来ていないわ
X:相手が行政のやつか
Z:行政の前の相手
X:あのバカ、まだやってんのか
Z:こないだも新しいサイト作らされたのよ
X:サイト作るのは得意だろ
Z:Yは注文が多いのよ
X:どんな注文なんだ
Z:検索されても表示されないようにしろとか、チャット機能持たせろとか
X:何に使うんだ、そんなサイト
Z:理由を聞くと注文が増えるので聞かないことにしてるわw
X:作成にかかった手間代を請求してやりゃいい
Z:私の相手の自宅を特定してくれたので強くはいえないのw
X:貸しを作られて、こき使われてんだな
Z:wwwwwwwwww
X:Yは何してんだ
Z:問い合わせとか、いろいろ来てるみたいよ
X:調子にのって取材とか受けてんじゃねえだろうな
Z:wwwwwwwwww
X:そういや、またネットの誹謗中傷が問題になってるな
Z:いつものことだけどね
X:しばらくすると落ち着くんだよな
Z:今まで同じことの繰り返しだもんね
X:厳罰化とかしてもなくならないからな
Z:いつの時代もルールを守らない人はいるのよね
X:さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
Z:私も寝るわ、おやすみ~B

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「また、まとめ屋のサイト見てたんですか」、声をかけた男がいう。
「参考になることがあるからな」、声をかけられた男がいう。
「彼らがWSI訴訟に関わっていなければと考えることがあります」、声をかけた男がいう。
「もしかすると、真逆の結果になっていたかもな」、声をかけられた男がいう。
「彼らは何のために、こんなことしているんでしょうね」、声をかけた男がいう。
「彼らが愛読する『予告犯』って読んだことあるか」、声をかけられた男がいう。
「ないです」、声をかけた男がいう。
「『予告犯』に、犯人たちの行動を表す言葉がでてくる」、声をかけられた男がいう。
「どんな言葉ですか?」、声をかけた男がいう。
「『それが誰かのためになるという間違いのない確信を得た時、人は利得を超えた行動をとることがある』」、声をかけられた男がいう。
「少しだけ、彼らのことがわかったような気がします」、声をかけた男がいう。
「あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

「WSI訴訟」は、WSI(ワールド株式投資)による投資詐欺の民事訴訟。
「プロ向けファンド」は、主として、証券会社や銀行、投資会社などの「プロ投資家」(適格機関投資家)に売るために組成されたファンドをいい、広く一般消費者に向けて売られることは想定していなかった。そのため、これまで「プロ向けファンド」の運用・販売を行う事業者は、「登録」よりも条件や規制の緩い金融庁への「届出」で済み、不当行為に関する行政処分は定められてなかった。

WSIは「プロ向けファンド」を悪用。「当社は金融庁に届出をした業者です」「当社はプロ投資家を対象としたプロ向けファンドを運用している業者です」などと、主にインターネットで消費者を勧誘して、多くの被害をもたらした。
「プロ向けファンド」が一般消費者に向けて売られることは想定していなかったため、WSIへの損害賠償請求は難しいと思われていた。だが、被害者である原告が、WSIの不法行為を立証したことにより、満額に近い請求額が認められた。

「WSI訴訟」以降、「プロ向けファンド」を悪用した投資詐欺を防ぐため、金融商品取引法(金商法)の見直しが行われ、この改正金商法は2015年5月27日に成立し、2016年3月1日に施行されている。
これにより、「プロ向けファンド」を一定の要件を満たさない一般の投資家には売ることが禁止され、届出業者に対する規制が厳しくなり、問題のある届出業者には業務停止命令を含む行政処分が行えるようになっている。

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