2023年7月17日月曜日

銘柄を明かさない理由R021 敗者のゲーム(後編)

第021話 敗者のゲーム(後編)

2007年から米国の住宅市場は大幅に悪化していた。
サブプライムローンなどの延滞率は更に上昇し、住宅差押え件数も増加を続けた。
ファニー・メイやフレディ・マックなどの連邦住宅抵当公庫は、危機的状態となっていた。
政府支援機関は、買取上限額の引上げや、投資上限額の撤廃など様々な手を尽くしていた。

2008年9月8日、財務省が追加で約3兆ドルをつぎ込む救済政策が決定された。
この政策は「Too big to fail(大きすぎて潰せない)」の最初の事例となった。
大手証券会社リーマン・ブラザーズも例外ではなく、多大な損失を抱えていた。
2008年9月15日、同社は連邦倒産法第11章の適用を連邦裁判所に申請するに至った。

同社は、破綻の前日まで、複数の金融機関と売却の交渉を行っていた。
売却の交渉は、財務省や連邦準備制度理事会(FRB)の仲介によるものだった。
交渉には、HSBCホールディングスや韓国産業銀行などが参加していた。
日本のメガバンク数行も参加していたが、同社の買収を見送ったといわれている。

最終的に残ったのは、バンク・オブ・アメリカ、メリルリンチ、バークレイズであった。
だが、連邦政府が公的資金の注入を拒否していたことから、交渉は不調に終わった。
損失に苦しむメリルリンチはバンク・オブ・アメリカへの買収打診を決定していた。
バークレイズも巨額の損失を抱え、同社を買収する余力は、どこにも存在していなかった。

2008年9月16日、ジョウシマは、帰宅すると、PCを起動、株価を確認した。
確認すると、保有株は軒並み下がっていた。
米国の大手証券会社が倒産したことが、原因らしかった。
すぐに元に戻るだろうと思い、PCを閉じた。

その日から、後にリーマン・ショックと呼ばれる下落相場になった。
ジョウシマの保有株は、反発することなく、下がり続けた。
1部昇格して100万円を超える含み益があった銘柄も下がり続けた。
やがて含み益はなくなり、含み損になった。

一部昇格するだろうと思い買った、東証二部の小売業の銘柄はすぐに含み損になった。
この銘柄は買った時点の株価が、BPS(1株当たり純資産)を上回っていた。
欲にとらわれていたジョウシマは、初心を忘れ、高値掴みをしていた。
気づくと、この銘柄の株価は、買値の半値にまで下がっていた。

さすがにもう下がらないだろうと思い、同じ株数を買い増した。
だが、その後も相場は下がり続け、保有株は全て含み損になった。
翌年になってからも、相場は下がり続けた。
買い増した株は、買い増したときの株価の半値に近づいていた。

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