2023年7月19日水曜日

銘柄を明かさない理由R023 相場師の聖地(中編)

第023話 相場師の聖地(中編)

本屋を出たジョウシマは、東京証券取引所を見に行くことにした。
ニュースなどで見たことはあるが、実際に目で見たことはなかった。
東京証券取引所へ近づくにつれ、人通りは少なくなっていった。
建物の南側に着くと、その大きさに圧倒された。

しばらく見た後、建物の北側に回ってみることにした。
東側の歩道を北へ向かって歩いていると、道路を挟んで神社があった。
歩道から見ると、小さい神社だということがわかった。
せっかくなので、記念に寄ってみることにした。

境内には、「兜神社の由来」という案内板があった。
小さいが歴史のある神社らしく、取引所が氏子総代となっていた。
ジョウシマは、手水舎の水で手水を行うと、神前に進んだ。
金属製の賽銭箱に賽銭を投じると、二拝二拍手一拝した。

境内には「兜岩」と彫ってある変わった形の石もあった。
帰ってから、この神社について調べてみようと思った。
偉大なる相場師たちも、この神社に来たことがあるのかもしれない。
また、来ようと思い、神社を後にした。

来た時とは違う道を通って帰ろうと思い、狭い路地に入った。
路地には、飲食店が何軒かあった。
せっかくなので、大衆食堂らしい店に入ってみることにした。
のれんをくぐって、引き戸を開けると、そこそこの客がいた。

店内にはいくつかのテーブル席があり、奥が厨房になっていた。
壁には、きつねうどんやカレーライスの値札が貼ってあった。
テーブルや椅子は使い込まれており、時代を感じさせた。
奥から「いらっしゃいませ、お好きなお席へ」と女性の声がした。

端にあるテーブル席が空いていたので座った。
座って待っていると、エプロン姿の女性が注文をとりに来た。
ジョウシマは、壁に貼ってあるメニューから、焼酎のロックを頼んだ。
すぐに焼酎のロックとお通しが運ばれてきた。

ジョウシマは買った「福澤桃介式」を取り出すと、読み始めた。
気づくと一時間ほど経っていたので、支払いをして店を後にした。
食事を頼まなかった人は初めてだわ。
ジョウシマのいたテーブルを片付けながら、女性店主は思った。

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