2023年7月18日火曜日

銘柄を明かさない理由R022 相場師の聖地(前編)

第022話 相場師の聖地(前編)

ジョウシマが高値掴みをした東証二部の小売業の銘柄の含み損は増え続けていた。
買値の半値になったときに買い増したが、さらに半値になろうとしていた。
この銘柄の評価額は、取得額の2分の1どころか、3分の1になろうとしていた。
現物株なので返済期限などはない、半値になるたび買い続けてやる。

2009年3月10日、ジョウシマは2度目になる同数での買い増しを行った。
買い増したが、含み損が多いため、焼け石に水ほどの効果しかなかった。
保有する全ての銘柄が含み損で、トータルの評価損益率は-40%を超えていた。
含み損の総額は、ジョウシマの年収を上回っていた。

この日、日経平均株価が、バブル崩壊後の最安値を記録した。
発端は、2008年9月15日の大手証券会社リーマン・ブラザーズの倒産だった。
6,000億ドル(約70兆円)の負債を出した倒産は、世界規模の金融危機を引き起こした。
当初、影響は軽微と見られていた、日経平均株価も下落していった。

前日の米国の雇用統計が予想より悪かったことで、景気悪化の警戒感が高まっていた。
東京株式市場では、日経平均株価が3営業日連続で下落していた。
3月10日も、下落の流れのまま、株価は続落した。
取引終値は、前日比31円05銭安の7,054円98銭だった。

最安値を受けて、当時の財務・金融・経済財政相は、下記の意思表明をした。
「株安がもたらす信用収縮には断固立ち向かう」
この意思表明により、期待感が戻り、翌日の日経平均株価は急反発した。
売られていた金融株や輸出関連株が買い戻され始め、市場は安定を取り戻し始めた。

2009年4月、東京都中央区日本橋。
会社帰りのジョウシマは、売り場面積が広い本屋へ向かっていた。
目的は、ネットで調べた投資関連の本を買うためだった。
本屋に着いたジョウシマは、端末で在庫を確認すると、目的だった下記の本を購入した。

「賢明なる投資家」ベンジャミン・グレアム
「福澤桃介式」福澤桃介
「私の財産告白」本多静六
「相場師一代」是川銀蔵

市場は回復しつつあるが、ジョウシマの含み損はなかなか減らなかった。
原点回帰じゃないが、一度、思考をリセットする必要がある。
ネットで調べた偉大なる相場師たちの本に、ヒントがあるかもしれないと思った。
ベンジャミン・グレアム以外は、聞いたことがなかった相場師だった。

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