2019年10月19日土曜日

銘柄を明かさない理由R281 防衛の最前線(中編)

第281話 防衛の最前線(中編)

新宿歌舞伎町を囲む大通り。
「コイツ、こんなとこにいやがったのか、お嬢さん、怪我はないか」
ガタイのいいスーツ姿の男性は倒れている男に近づくと、横の女子高生にいった。
「いきなり、ぶつかられてチョー迷惑なんですけど」

尻餅をついていた女子高生が立ち上がりながら、ガタイのいいスーツ姿の男性にいう。
「すまねえな、コイツはこの町になれてないみたいなんだ、許してやってくれ」
ガタイのいいスーツ姿の男性が、女子高生に謝った。
「ホント、早く"回収"してよね」、女子高生はいうと、その場を立ち去った。

ガタイのいいスーツ姿の男性は、倒れている男を立たせると、肩の下に手を回した。
「しっかりしろよ、お嬢さんに迷惑かけやがって。
今から連れて帰って、じっくりと話を聞かせてもらうからな」
肩の下に手を回した男に小声でいうと、ガタイのいいスーツ姿の男性は歩き始めた。

ガタイのいいスーツ姿の男性が歩き始めて、しばらく経ったときだった。
1台のワゴン車が、短くクラクションを鳴らして横に停車した。
ワゴン車の運転席から、鳥のくちばしのような黒マスクをした男が降りてきた。
黒マスクをした男は、ワゴン車の後部座席のドアを開けた。

ワゴン車の後部座席には、派手なシャツを着た2人の気を失った男がいた。
奥には、気を失っているチャイナドレスを着た若い女性もいた。
ガタイのいいスーツ姿の男性は、後部座席に自分が運んでいた男を乗せた。
黒マスクをした男は後部座席のドアを閉めると、運転席に乗り込んだ。

ガタイのいいスーツ姿の男性も助手席のドアを開くと、ワゴン車に乗り込んだ。
ガタイのいいスーツ姿の男性は、胸ポケットからタバコを取り出すと火を点けた。
「一仕事終えたんだ、禁煙なんていうなよ」、運転席の黒マスクをした男にいった。
黒マスクをした男は、軽く咳き込むと、ワゴン車を走らせ始めた。

走るワゴン車の助手席で、ガタイのいいスーツ姿の男性は思い返していた。
ガタイのいいスーツ姿の男性は、日本を守る組織の一員だった。
半年前、ガタイのいいスーツ姿の男性に、組織から指示があった。
指示は、国内に潜入した非合法組織を国外へ退去させろという内容だった。

今回の作戦が大きく動いたのは、ある少年が狙いの店を訪れたからだった。
そのとき、ガタイのいいスーツ姿の男性のハンズフリーフォンに着信があった。
電話をしてきた相手は、これから、その少年と接触すると伝えてきた。
「素性を確認しろ」、ガタイのいいスーツ姿の男性は手短に指示を伝えた。

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