2019年10月16日水曜日

銘柄を明かさない理由R277 迷宮都市(前編)

本ブログには、自身が初めて書いた小説「銘柄を明かさない理由R」がある。
5人の無敗の相場師、ロイヤルストレートフラッシュの物語である。
そして彼らを取り巻く人々の物語でもある。
もちろん、素人が書いた小説なので、プロの方が書いた小説の足元にも及ばないw

主要登場人物は、無敗の天然こと10(テン)、無敗の相場師J、無敗のクイーンことQ。
無敗の大物相場師キングことK、無敗の若き相場師エースことAである。
小説を書いたことがある方は、おわかりだろう。
小説を書くことは、自分の頭の中に浮かんだイメージを文章にすることだw

文章にしていると、次から次へとアイデアが生まれることがある。
よくいわれる、登場人物たちが勝手に動き出す状態である。
先日から「銘柄を明かさない理由R」の登場人物たちが勝手に動き出している。
それでは、「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

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第277話 迷宮都市(前編)

新宿歌舞伎町の裏通り。
21世紀少年は、目的の女性の名前を店名にしたスナックに向かっていた。
店につく頃には、開店時間になっているはずだ。
しかし、あの女性、只者じゃない、21世紀少年は確信していた。

21世紀少年は、昼間に出会った女性の顔をネットで配信した。
普通であれば、瞬く間に身元を特定できる有益な情報が集まってくる。
だが、女性の身元を特定できる有益な情報は集まらなかった。
情報化社会の現在、身元を特定できない人間なんて存在するはずがない。

店の前についた21世紀少年は、開店時間を過ぎていることを確認した。
店のドアを開けると、中はカウンター席が10席ほどの古びた内装の店だった。
開店時間直後なので、店の中に客は1人もおらず、店主らしき女性1人だけだった。
「いらっしゃいませ、あら昼間の若い子じゃない」

カウンターの中には、チャイナドレスを着て、若作りした店主らしき女性がいた。
「中の雰囲気が、どうしても気になって、来てしまいました」
メガネをかけた21世紀少年はいうと、にっこりと微笑んだ。
「変った子ね、いいわよ、気の済むまで見ていって」、店主らしき女性が笑う。

21世紀少年は、入口に近い手前のカウンター席に座った。
ピーナッツの入った小皿を差し出しながら、「ご注文は」と女性店主が聞く。
「2,000円しかないので、2,000円で飲めるものをください」、21世紀少年がいう。
「わかりやすい注文ね」、女性店主はいうと、ウイスキーの水割りを作り始めた。

「どうぞ」、女性店主はいうと、21世紀少年の前にグラスを置いた。
「ありがとうございます」、21世紀少年はグラスを持つと、口をつけた。
舌で味を確認したが、変な味はしなかった、だが油断は禁物だ。
21世紀少年は飲んだフリをして、グラスを置いた。

自分を見つめる女性店主に21世紀少年は思った。
本当に、昼間に会った女性と同じ女性なのか。
いくらメイクで若作りしたとしても、どう見ても20代にしか見えない。
昼間に会っていなければ、同級生だといわれても信じただろう。

さて、得体のしれない店に長くいるのは危険だ。
とっとと聞きたいことを聞いて、店を出るとしよう。
「この店にクーロンズ・アイはありますか」、21世紀少年は尋ねた。
「あるわよ」、女性店主は即答した。

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