2019年10月7日月曜日

銘柄を明かさない理由R272 天使の降臨(中編)

第272話 天使の降臨(中編)

地方都市の駅前にあるコインパーキングの入口。
サングラスをした1人の女性が、ある男が帰ってくるのを待っていた。
女性は高級ブランドの服を着こなしており、ファッションモデルのようだった。
下校中の男子学生たちが、ちら見しながら通り過ぎていく。

それにしても暑いわね、地球温暖化って、ウソじゃなかったのね。
女性は、襟元を大きく広げると、持っていた扇子で胸元に風を送った。
男子学生たちの動きが一瞬、止まった。
チェリーボーイ(童貞)たちには、刺激が強すぎたかもね、女性はほくそ笑んだ。

ほくそ笑んだ女性は無敗の相場師の1人、ウィッグの女だった。
この駅前の感じは、私が生まれ育った街の駅前に似てるわね。
ウィッグの女は、ある地方都市で生まれ育った。
彼女の家は母子家庭で、容姿のよかった母親は水商売で生計を立てていた。

そんな母親に似たのか、彼女は幼い頃からモテた。
彼女に言い寄ってくる同級生や上級生は後を絶たなかった。
彼女に言い寄って来た学校の教師は、片手の数では足りなかった。
バイト先のスタッフや客を含めると、言い寄って来た男の数は3桁を軽く超えていた。

彼女は、容姿がよくて金を持っている相手としか、付き合わなかった。
付き合ってから、相手の男の資産がわかると、すぐに別れた。
彼女の別れ際の台詞は、いつも同じだった。
「もっと、お金を持っていると思ったのに、たいしたことないのね」

男たちは、逆上することなく彼女のことを諦めた。
よく、女性から別れを告げられ、逆上する男がいる。
彼らが逆上するのは、自分にはその相手しかいないと思うからだ。
容姿がよくて金を持っている男は、付き合う相手には困らないので逆上しない。

高校卒業後、彼女は街を出て、銀座にある高級クラブのホステスになった。
頭脳明晰で容姿に恵まれた彼女は、すぐに店でも1、2を争うホステスとなった。
やがて、無敗のキングの英才教育を受けた彼女は、無敗の相場師になった。
ある若いイケメンに興味を覚えた彼女は、行動を共にするべく高級クラブを辞めた。

そのとき、通りの向こうに、若いイケメンの姿が見えた。
天使のような笑顔を浮かべているイケメンは、無敗のエースと呼ばれている男だった。
私がこれまで出会った男の中で、最も興味深い男、無敗のエース。
これからも楽しませてもらうわよ、ウィッグの女は妖艶な笑みを浮かべた。

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