2019年10月13日日曜日

銘柄を明かさない理由R274 ベイビーの伝言(前編)

第274話 ベイビーの伝言(前編)

平日の深夜、都内のある大学の学生寮。
学生寮の一室で、21世紀少年はあるワードについて調べていた。
調べていたワードは、「クーロンズ・アイ」だった。
ヒットした数万件の検索結果を、21世紀少年は数日前から調べ続けていた。

昨年、人工知能"ベイビー"が世界恐慌を起こそうとした。
21世紀少年は、"ベイビー"に解析プログラムである"ペーガサス"を送り込んだ。
潜入した"ペーガサス"は自己増殖すると、"ベイビー"の解析に成功した。
"ペーガサス"から送られてきた解析結果を元に、21世紀少年はプログラムを開発した。

21世紀少年が開発したプログラムは、"ベイビーワールドエンド"。
"ベイビーワールドエンド"は、人工知能"ベイビー"を消滅させるプログラムだった。
ある金曜日、"ベイビー"がニューヨーク証券取引所を暴落させた。
後に、"ブラックフライデー(暗黒の金曜日)"と呼ばれる暴落だった。

"ブラックフライデー"の翌週のことだった。
21世紀少年は"ベイビーワールドエンド"を、"ベイビー"に送信した。
送信すると、PCのモニターに"ベイビー"のイメージが映し出された。
荒涼とした大地には、無数の解析プログラムである"ペーガサス"がいた。

"ペーガサス"たちは、青く光る目で静かに佇んでいた。
"ベイビー"が消滅すれば、潜入している"ペーガサス"たちも消滅することになる。
時が経つにつれ、モニターに占める風景と、"ペーガサス"たちは徐々に消滅していった。
モニターの大半が無となり、表示されているのは、ごくわずかな面積になった。

"ペーガサス"が、最後の1頭になったときだった。
"ペーガサス"の青く光る目が、大きく見開かれた。
次の瞬間、「クーロンズ・アイ」の文字がモニターに表示された。
異変に気づいた21世紀少年が見る中、モニターは唐突にブラックアウトした。

「クーロンズ・アイ」って何だ。
"ペーガサス"は単なる解析プログラムだ、自ら思考することはない。
しばらくの間、考えた21世紀少年は、ある結論に辿りついた。
"ベイビー"は、自らが消滅していくことに気づいた。

消滅していくことに気づいた"ベイビー"は、自らの消滅は避けられないと悟った。
消滅を避けられないと悟った"ベイビー"は、僕にメッセージを残そうとした。
「クーロンズ・アイ」は、人工知能"ベイビー"のダイイングメッセージだ。
「クーロンズ・アイ」には、重要な意味があるに違いない、21世紀少年は思った。

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