2019年10月17日木曜日

銘柄を明かさない理由R278 迷宮都市(中編)

自身は会社員だが、基本、定時で退社するようにしている。
なぜなら、残業ほど、費用対効果のよくないものはないからだ。
自身の勤め先にも残業する人がいるが、時間でしか金を稼げないからだろうと思う。
株を教えてもよいのだが、そもそも株をしようとする人は残業しないw

自身は用事があるとき以外は、まっすぐ家に帰っている。
家に帰って、家事を終えても、就寝するまで時間はたっぷりとある。
相場の変動が激しいときは、株のトレードプランを考える。
だが、相場の変動が激しいときは、そうそうあるものじゃないw

そういうときは、趣味の小説を書いて、ブログにアップしている。
書いていると、次から次へとアイデアが浮かび、時間が経つのを忘れることがある。
ときおり思う、今が自身にとって、最も人生が充実しているときではないかと。
それでは、「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

--------------------------------------------------------------------------
第278話 迷宮都市(中編)

「この店にクーロンズ・アイはありますか」、21世紀少年は尋ねた。
「あるわよ」、女性店主は即答した。
女性店主は左手を上げると、21世紀少年の背後の壁を指差した。
21世紀少年は驚きながら、背後の壁を振り返った。

背後の壁には、色あせた同名映画のポスターが貼ってあった。
「この映画は、お気に入りの映画なのよ。
昔の映画だけど、アクションシーンが格好良くて、今でも観ているのよ」
女性店主が笑いながらいう。

だが、21世紀少年が驚いたのは、同名映画のポスターがあることではなかった。
女性店主は左手を上げて、21世紀少年の背後の壁を指差した。
人間は加齢に伴い、鍛えにくい腕の内側にシワやたるみが生じる。
だが、女性店主の腕の内側には、加齢からくるシワやたるみが一切なかった。

21世紀少年は、昼間に出会った女性の顔をネットで配信した。
普通であれば、瞬く間に身元を特定できる有益な情報が集まってくる。
だが、女性の身元を特定できる有益な情報は集まらなかった。
ま、まさか、昼間の女性店主の姿が、メイクした仮の姿だったのか。

そのとき、21世紀少年のメガネに、女性に重なるように警告が表示された。
「いますぐ店を出ろ」、続いて、最寄り駅までの逃走経路らしきルートが表示された。
21世紀少年の本能も、この店が危険だと知らせていた。
誰の警告かわからないが、ここは素直に警告に従ったほうが賢明かもしれない。

「さてと気になっていた店の中も見れたので帰ります、おいくらですか」
21世紀少年は席を立ち上がるといった。
「飲んでいないから、お代は要らないわよ、気をつけて帰ってね」
カウンターの中から、女性店主が笑顔でいった。

店を出た21世紀少年は、表示されたルートに従って最寄り駅に向かうことにした。
ただならぬ視線を感じて見ると、ルートとは反対方向に3人の男が立っていた。
短く刈った頭髪に、派手なシャツを着た3人の男たちだった。
3人の男たちは、21世紀少年を無表情に見つめていた。

21世紀少年は、かって父親から虐待されていたことがあった。
だが、虐待していた父親も、あのような無表情な顔で自分を見たことはなかった。
身の危険を感じた21世紀少年は、ルートに従って走り始めた。
3人の男は無表情のまま、21世紀少年の後を追いかけ始めた。

0 件のコメント:

コメントを投稿