2020年3月18日水曜日

銘柄を明かさない理由R314 RED & BLACK(後編)

第314話 RED & BLACK(後編)

上海市の南京路沿いにある高級ホテルの1室。
高級ホテルの1室には、若い2人の男女がいた。
「日本語の家庭教師になれって、無茶ぶりすぎるだろ」、若い男がいう。
若い男は、無敗の相場師エースこと、アマネ オトヤだった。

「無茶ぶりかもしれないけど、約束しちゃったんだから、今さら断れないわよ」
同じく無敗の相場師である"ウィッグの女"こと、キサラギ ミレイがいう。
「確かに、あらゆる手をつかって、"BABY"のことを調べてくれと頼んだ。
でも、どうして家庭教師をしなくちゃいけないんだ」、アマネ オトヤがいう。

「確かにそうね。順を追って説明するわ。
"BABY"のことを調べるため、上海のラウンジで働き始めたの。
ラウンジといっても、会員制の高級ラウンジよ。
そのラウンジで、興味深い男と知り合ったの」、キサラギ ミレイがいう。

「興味深い男って、"BABY"に関係ある男か」、アマネ オトヤがいう。
「話を聞いてよ、興味深い男の名は、劉宋明(りゅうそうめい)。
噂では、アジアの金融政策に多大なる影響力を持っているらしいわ。
彼なら、上海の"BABY"についても把握しているはずよ」、キサラギ ミレイがいう。

「なぜ、家庭教師をしなくちゃならないんだよ」、アマネ オトヤがいう。
「劉はアジアの金融政策に影響力を持つ男らしいけど、詳しいことはわかっていない。
劉の家庭に入り込むことができれば、家族から劉宋明の情報が収集できるでしょ」
キサラギ ミレイが笑いながらいう。

「劉の娘に、日本語を教えることはできるかもしれない。
だが、娘からどうやって情報を収集すればいいんだ」、アマネ オトヤがいう。
「劉の娘は学生なので、おそらくだけど、娘から情報収集はできないわ。
情報収集できるとしたら娘の母親、彼の結婚相手からよ。

劉の結婚相手は、バツイチのフランス国籍の女性で、前の夫との間に娘がいた。
彼女の名はレナール、娘の名はマチルダらしいわ」、キサラギ ミレイがいう。
「その名前、何かの小説で読んだことがあるんだけど」、アマネ オトヤがいう。
「さすがね、スタンダールの『赤と黒』に登場する女性たちと同じ名前よ。

『赤と黒』の主人公、ジュリヤン・ソレルは、2人と恋愛関係になる。
だからといって、あなたがジュリヤン・ソレルってワケじゃないからね。
もし、『赤と黒』と同じような展開になったら、承知しないわよ」
キサラギ ミレイは、ぞっとするような妖艶な笑みを浮かべた。

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