2020年4月1日水曜日

銘柄を明かさない理由R317 Drive to hell(後編)

銘柄を明かさない理由R317 Drive to hell(後編)

アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ。
マーフィーは、従業員数人の小さな町工場を経営していた。
ある日、マーフィーは取引先の銀行に、証券会社の担当であるカルヴィンを紹介された。
紹介されたカルヴィンの指示で、マーフィーは株で思いがけない利益を手にした。

ある日、思いがけない利益を手にしたマーフィーの元に、カルヴィンがやって来た。
マーフィーは工場の片隅で、カルヴィンを出迎えた。
傍らでは、油まみれの工具を手にした従業員たちが、作業をしていた。
パイプ椅子に座ったカルヴィンは、元気がなかった。

「どうした、元気がないな」、マーフィーは心配していった。
「ええ、ここのところ営業成績が上がらなくて」、カルヴィンは深い溜息をついた。
元気のないカルヴィンを見かねたマーフィーはいった。
「もし、俺で力になれるならいってくれ、アンタには世話になっているからな」

「ほ、本当に助けていただけるんですか」、カルヴィンは目を輝かせるといった。
「何をすればいい」、マーフィーはいった。
「マーフィーさんの資金を、私に預けていただけませんか。
決して損はさせません、責任を持って運用しますから」、カルヴィンがいう。

「1万ドル(約100万円)でよければ、君に預けるよ」、マーフィーはいった。
「ありがとうございます、では、こちらにサインを」、カルヴィンは書類を取り出した。
カルヴィンは取り出した書類の運用金額欄に、「1万ドル」と記入した。
マーフィーは、カルヴィンが指示する署名欄にサインをした。

サインをした数ヶ月後、ニューヨーク証券取引所が暴落した。
預けた1万ドルは目減りしているかもしれないな、マーフィーは思った。
ある日のこと、カルヴィンが勤めている証券会社から電話があった。
電話に出たマーフィーに、証券会社の女性がいった。

「お客様の損失は、100万ドル(約1億円)を超えました。
今週中に、10万ドル(約1000万円)の追加入金をお願いいたします」
「100万ドルの損失に、10万ドルの追加入金だと、何をいっているんだ」
マーフィーが声を荒げると、証券会社の女性は冷静な声でいった。

「お客様が契約なされたのは、最もハイリスクハイリターンの運用を行う商品です。
今週中に追加入金がなければ、お客様の資産を差し押さえさせていただきます」
「ふざけるな、カルヴィンは決して損はしないといった、奴を出せ」
「彼はすでに辞めました」、証券会社の女性がいい、電話が切れた。

0 件のコメント:

コメントを投稿