2020年4月13日月曜日

銘柄を明かさない理由R319 Dead or Alive(中編)

銘柄を明かさない理由R319 Dead or Alive(中編)

アメリカ合衆国イリノイ州シカゴ。
人質の女性警官を乗せた逃走用車両、白のセダンはシカゴのハイウェイに入った。
ハイウェイは、交通規制により、他に走行している車両はなかった。
運転する男、マーフィーは暴落相場で多額の損失を出した個人投資家だった。

自暴自棄になったマーフィーに、失うものは何もなかった。
マーフィーは証券会社で応対に出た社員に発砲した。
発砲した社員の生死はわからない。
だが、捕まれば、よくても無期懲役だろう。

ハイウェイを走るマーフィーの前に、上空でホバリングするヘリが見えた。
ヘリの下のハイウェイには、黒の防弾装備に身を包んだ2人の男が立っていた。
ヘルメットを被った2人の男は自動小銃を構え、マーフィーへ銃口を向けていた。
だが、ハイウェイの幅員は広く、2人の男をかわすのは容易だった。

マーフィーは、2人の男の右側を抜けるべく、車の速度を上げた。
自動小銃の乾いた発射音がし、車のフロントガラスに孔が開いた。
マーフィーは、ブレーキを踏み込むと、車を停めた。
今、警告もなしに撃たれたよな、マーフィーは呆然とした。

マーフィーが見ている前で、1人の男が左手を上げた。
左手を上げた男は、マーフィーへ向かって左手を振り下ろした。
左手を振り下ろすと同時に、横の大柄な男が自動小銃の連射を始めた。
左手を振り下ろした男も、大柄な男と同じように自動小銃の連射を始めた。

車のフロントガラスは砕け散り、車体には無数の孔が開き始めた。
2人の男は、自動小銃を連射しながら、マーフィーの車へ向かって、歩き出した。
自動小銃で撃たれる中、マーフィーは運転席で身をかがめていた。
くそ、とりあえず、後退するしかない。

マーフィーは身をかがめたまま、車の後方を見ると、人質の女性警官の姿はなかった。
マーフィーが下を見ると、後部の床に仰向けに横たわる女性警官と目が合った。
上半身を拘束されていた女性警官は、左足を床につけ、右足を浮かせていた。
女性警官は身体をひねりながら、マーフィーに向けて、右足を振り上げた。

女性警官の右足は、マーフィーのこめかみにクリーンヒットした。
よろめくマーフィーに、女性警官は膝を曲げると、マーフィーめがけ両足を突き上げた。
車内の天井に、したたかに頭をぶつけたマーフィーは意識を失った。
愚か者、人質の女性警官に扮していたチーム"アルファ"の女性隊員、サンドラは思った。

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