2020年12月31日木曜日

銘柄を明かさない理由R379 動かざること山の如し(後編)

自身のオリジナル小説「銘柄を明かさない理由R」。
いよいよ、「クーロンズ・アイ編」の最終話である。
素人の小説をお読みいただいた数少ない読者には、心よりお礼を申し上げる。
もし、ヒマつぶしのお役にたてたのであれば、嬉しく思うw

あと、お知らせがある。
開始時期は未定だが、新シリーズの連載を予定している。
シリーズ名だけは決めており、「出羽の天狗(でわのてんぐ)編」。
それでは、「クーロンズ・アイ編」の最終話をお届けするw

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銘柄を明かさない理由R379 動かざること山の如し(後編)

兜町にある、"無敗のキング"ことジツオウジ コウゾウが、創業した証券会社。
"無敗のクイーン"ことクジョウ レイコは、資産運用部署"アルカディア"の責任者だった。
"アルカディア"のメンバーは10名で、全員が女性社員だった。
平時の"アルカディア"は、クジョウと、"無敗の天然"ことテンマ リナの2名体制。

だが、必要に応じて、社長室秘書が他の9名に召集をかける体制だった。
早朝出社したクジョウは、ニューヨーク証券取引所の異常な値動きと原因を確認した。
"買い"と判断したクジョウは、社長室秘書に"アルカディア"メンバーの招集を依頼した。
社長室秘書の招集に応じて、"アルカディア"メンバーが続々と集まってきた。

東京取引証券所の取引開始時間が迫る中、ミーティングが始まった。
クジョウが、テンマを含む"アルカディア"メンバーにいう。
「お前たちは選ばれし者だ、自分たちが社内、業界、いや世界で一番、偉いと思え。
お前たちに勝てる奴など、この世に存在しない、必ず目標を達成しろ」

同じ頃、兜町にある日本一の株屋のトレーディングルーム。
チーフトレーダーである内海は、部下たちに大量の買いをするよう指示をした。
部下が持ち場に戻ると、部下の1人、塚原が内海の元へやってきていった。
「今日の大量買いには、何か理由があるのでしょうか」

「理由はないが、聞こえたんだ」、内海は、塚原を見るといった。
「何が、聞こえたんでしょうか」、塚原が尋ねる。
「相場の底打ちを知らせるベルが鳴った音だ」、内海が塚原をにらみつけ答えた。
「わ、わかりました」、塚原は慌てて自分の持ち場に戻っていった。

内海は、日本一の株屋のチーフトレーダーだが、財務省にも属している。
また、日本を守り続けてきた"名のない組織"に属する、"日本証券界の守護者"だった。
"名のない組織"は、相場を暴落させた劉宋明(りゅうそうめい)への反撃を考案した。
反撃のコード名は、"風林火山(ふうりんかざん)"と名付けられていた。

"風"は、初期段階における素早い情報収集、"林"は、水面下での静かな反撃準備。
"火"は、劉が気づないうちに行う侵掠(しんりゃく)。
劉が、売り注文を終えたところで、相場が上昇する仕掛けを行うというもの。
すでに、ドイツでの仕掛けにより、ニューヨークの相場は上昇した。

いよいよ、ファイナルステージの"山"だ。
"風林火山"の"山"は、"動かざること山の如し"を意味する。
劉宋明よ、これからできる上昇相場の"山"、貴様にこの"山"を動かすことができるかな。
"日本証券界の守護者"である内海は、不敵な笑みを浮かべた。

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