2020年5月20日水曜日

銘柄を明かさない理由R328 無敗のクイーンと無敗のジャック(中編)

第328話 無敗のクイーンと無敗のジャック(中編)

"無敗のクイーン"ことクジョウ レイコは、勝ち続けてきた。
物心がついたとき、クジョウは自分の家が母子家庭であることを知った。
だが、父親がいる家庭を羨ましく思うことはなかった。
なぜなら、クジョウの周りには弱いものをいじめる男しかいなかったからである。

母子家庭をからかう男子生徒を、クジョウは皆の前で叩きのめしてきた。
勉強だけが取り得の男子生徒には、クジョウは簡単に最高点を取ってみせた。
高校生になったクジョウは、上級生たちに生意気だという理由で呼び出された。
さすがに無傷とはいかなかったが、クジョウは上級生たち全員を叩きのめした。

高校卒業後、クジョウは難関大学に入学した。
難関大学だが、クジョウにとってトップクラスの成績を維持するのは容易かった。
クジョウの就職活動が始まり、ほとんどの企業で彼女は最終面接までいった。
だが、母子家庭のせいか、届くのは不採用の通知ばかりだった。

ある日、面接先の企業へ向かうクジョウの目の前で、男と男の肩が激しくぶつかった。
年配のスーツ姿の男性が勢いよく転び、ぶつかった若い男が転んだ男性にいった。
「ちゃんと前見て歩けよ、おっさん」
「きさま、謝らんか」、正義感の強いクジョウは若い男にいった。

「なんや、ネエちゃん、文句あるんか」、若い男がいった。
「弱い犬ほど、よく吠える」、クジョウはいった。
「なんやと」、若い男がクジョウに近づいてきた。
1分も経たないうちに、若い男は路上に叩きのめされていた。

「大丈夫ですか」、クジョウは年配の男性に駆け寄ると声をかけた。
クジョウが助けた年配の男性は、ある証券会社の社長だった。
助けたことが縁で、クジョウは助けた社長が経営する証券会社へ入社することになった。
その証券会社は、"無敗のキング"ことジツオウジ コウゾウが会長の証券会社だった。

クジョウは入社してから、資産運用のコンサルティング業務を担当していた。
ある日のこと、クジョウは社長から自社の資産運用部署の立ち上げを命じられた。
クジョウは、女性社員10名からなる資産運用部署である"アルカディア"を立ち上げた。
以来、"アルカディア"は連戦連勝、クジョウは"無敗のクイーン"と呼ばれていた。

休日の昼下がり。
髪を後ろで束ねたクジョウは、トレーニングウェア姿でランニングをしていた。
クジョウが河川敷を走っていると、知り合いの男が寝転んでいるのが見えた。
知り合いの男は、"無敗のジャック"ことジョウシマだった。

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