2020年1月20日月曜日

銘柄を明かさない理由R301 無敗の個人投資家たち~スプリングベルの場合~(前編)

本ブログには、自身が初めて書いた小説「銘柄を明かさない理由R」がある。
5人の無敗の相場師、ロイヤルストレートフラッシュの物語である。
主要登場人物は、無敗の天然(10)こと、テンマ リナ。
無敗のジャック(J)こと、ジョウシマ ユウイチ。

無敗のクイーン(Q)こと、クジョウ レイコ。
あと無敗の大物相場師キング(K)こと、ジツオウジ コウゾウ。
まだ本名を明かしていない、無敗の若き相場師エース(A)である。
「銘柄を明かさない理由R」は筋書きのない趣味の小説だ。

あらかじめ、ストーリーは決めていないし、決めるのはサブタイトルだけだ。
先の展開が思い浮かばないことがあるが、そのようなときは待つことにしている。
不思議なもので、待っていれば登場人物が勝手に動き出してくれるのである。
それでは、「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

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第301話 無敗の個人投資家たち~スプリングベルの場合~(前編)

スイスで最も美しい教会があるといわれる街。
広大な敷地の中には豪邸があり、豪邸のすぐ近くには、教会が設けられていた。
教会ではステンドグラスから降り注ぐ朝日の中、黒髪の女性が祈りを捧げていた。
祈りを捧げていた黒髪の女性、スプリングベルは祈りを終えると、豪邸へ向かった。

「おはようございます、スプリングベル様、すでに朝食の準備は整っております」
黒服を着た金髪の若い男性秘書のアレックスが、玄関の前で恭しくいう。
「おはよう、アレックス、いつもありがとう」
スプリングベルはいうと、アレックスが開けた玄関ドアを通り、ダイニングへ向かった。

スプリングベルとアレックスは、ダイニングに通じる重厚な木製扉の前に着いた。
扉の両脇には、黒服を着た若い男性執事が2人いた。
2人の男性執事は、スプリングベルが歩みを止めることがないよう、扉を開いた。
スプリングベルは「ありがとう」と2人の男性執事にいうと、ダイニングの中へ入った。

重厚な木製扉の中の窓のないダイニングは、天井から床まで白い空間だった。
ダイニングの中央には、空間と同じ白いテーブルと椅子があった。
アレックスが椅子を引くと、スプリングベルは静かに座った。
やがて、別の男性執事が、白いワゴンに乗せた朝食を運んできた。

フルコースの朝食を、スプリングベルは時間をかけて、ゆっくりと食べ終えた。
男性執事たちの片付けが終わると、アレックスがモニターのスイッチを入れた。
ブンという音と共に、壁一面がモニターに切り替わり、多くの映像が映し出された。
世界の市況に、先進国の主要メディアの報道番組などだった。

モニターから音声は流れておらず、ダイニングの静けさは保たれていた。
スプリングベルはキャスターの表情やテロップから、報道番組の情報を読み取っていた。
また、めまぐるしく変動する世界の市況から、各国の相場の動きも読み取っていた。
「ありがとう、アレックス、もういいわ」、スプリングベルがいった。

モニターのスイッチを切ったアレックスに、スプリングベルがいくつか指示をした。
「かしこまりました」、アレックスはいうと、トレーディングルームへと向かった。
スプリングベルは、スイスで屈指のプライベートバンカーだった。
徹底した顧客情報の守秘と着実な資産運用は、多くの顧客を獲得していた。

顧客の中には、各国政財界の要人や大口の機関投資家が数多くいた。
今日はいい天気なので、久しぶりに街にでも出かけようかしら。
黒髪でオリエンタルな美貌の持ち主、スプリングベルは椅子から立ち上がった。
2人の男性執事が扉を開くと、スプリングベルはダイニングを後にした。

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