2020年1月12日日曜日

銘柄を明かさない理由R298 無敗の個人投資家たち~ムラノ キョウスケの場合~(前編)

本ブログには、自身が初めて書いた小説「銘柄を明かさない理由R」がある。
5人の無敗の相場師、ロイヤルストレートフラッシュの物語である。
そして彼らを取り巻く人々の物語でもある。
もちろん、素人が書いた小説なので、プロの方が書いた小説の足元にも及ばないw

主要登場人物は、無敗の天然(10)こと、テンマ リナ。
無敗のジャック(J)こと、ジョウシマ ユウイチ。
無敗のクイーン(Q)こと、クジョウ レイコ。
あと無敗の大物相場師キング(K)と、無敗の若き相場師エース(A)である。

物語はフィクションだが、主要登場人物にはモデルとなった人物がいる。
ちなみに本編に登場する大物相場師キングのモデルは、複数いる。
複数のモデルの生き様を組み合わせたので、オリジナルキャラといえるかもしれない。
それでは、「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

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第298話 無敗の個人投資家たち~ムラノ キョウスケの場合~(前編)

その証券会社は、1925年(大正14年)に大阪府大阪市に設立された。
創業者の名は、野村財閥二代目の野村徳七だった。
やがて、その証券会社は本社を東京に移転、日本一の株屋となった。
高い情報収集能力と「ノルマ証券」といわれるほどの営業力が武器だった。

東京都中央区の日本橋のすぐ近くに、日本一の株屋の本社があった。
昨年、大阪支店長のムラノ キョウスケが取締役に抜擢された。
ムラノは、高級ブランドの銀縁メガネをかけた細身の男だった。
年齢は30代と若いが、同期の中では一番の出世頭だった。

過去に例のない20人抜きの人事で、歴代取締役の中では最年少の取締役だった。
その日、本社の会議室では、役員会が開かれていた。
会議室では、取締役兼大阪支店長のムラノが、役員から報告を受けていた。
ムラノの表向きの肩書きは平取締役だが、事実上の最高責任者だった。

「調査部の報告によると、年明けから米国の大口投資家が資金を引き上げてます。
理由は不明ですが、ホワイトハウスから何らかの情報があったものと思われます。
これらの報告を受け、当社も相場からの資金引上げを進めています」
役員の木本は、スライドの説明を終えると、席に戻った。

「一般の投資家には何も知らせんと、大口投資家だけに情報をリークか。
大口投資家だけ儲けさせて、己の支持率を高めるつもりやな。
姑息な政治家の考えそうなことやで。
まあええわ、相場からの資金引上げは継続や」、ムラノがいう。

「では、次の報告に移りたいと思います」、
司会役の代表執行役社長グループCEO、大川がいう。
「次の報告は何や」、ムラノが大川に尋ねる。
「来年度の営業戦略で、今野本部長の報告になります」、大川が答える。

「来客があるんで、後は大川に任せるわ、あとで議事録を送ってくれたらええわ」
ムラノはいうと席を立ち、振り返ることなく会議室を出ていった。
呆気にとられる役員たちに、大川が笑みを浮かべていう。
「今野本部長、ムラノ取締役が、あとで確認したくなるような報告をお願いします」

ムラノが会議室を出ると、ムラノ専属の女性秘書である小島が待ち構えていた。
「ジツオウジ様がお待ちです」、小島が頭を下げていう。
「わかった、すぐに向かう」
ムラノは"無敗のキング"こと、ジツオウジ コウゾウが待つ貴賓室に向かった。

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