2020年1月3日金曜日

銘柄を明かさない理由R296 無敗の個人投資家たち~ジョウシマ ユウイチの場合~(中編)

第296話 無敗の個人投資家たち~ジョウシマ ユウイチの場合~(中編)

元号が変った年の国内相場は、前年から下がり続けていた。
下がり続ける相場の中、驚くべきことに1人の男は利益を出していた。
利益を出している男は、ジョウシマ ユウイチという都内在住の会社員だった。
無敗のクイーンことクジョウ レイコから、無敗のジャックと呼ばれている男だった。

下がり続ける相場の中、ジョウシマは10年来の安値水準にあった株を仕込んだ。
仕込んでから二割以上の益が出ると、ジョウシマは元本引上げの売りを行った。
タダ株を手に入れたジョウシマは思った。
3年前と同じ値動きの相場、仕込みの本番はこれからだ。

その年の夏のある日、ジョウシマが待っていたときがついに訪れた。
狙っていた2銘柄の配当利回りが、場中に5%を超えたのである。
翌日の早朝、起床したジョウシマはPCを起動、昨日のNYダウを確認した。
確認すると、昨日のNYダウは今年最大の下落幅を記録していた。

「いざ、参ろうか」、ジョウシマは不敵な笑みを浮かべるとつぶやいた。
ジョウシマは狙っていた2銘柄へ、過去最高額となる買い注文を入れた。
会社へ向かうべく、身支度を始めたジョウシマはつぶやいた。
「2銘柄への集中投資、これぞ、まさしく二刀流の買いの奥義なり」

最近、ジョウシマは同じ夢を見ることが多くなった。
夢の始まりは、ジョウシマが海にいて、両脇を2人の兄弟が泳いでいる場面だった。
泳げないジョウシマは、2人の兄弟の腰に手を回し、必死にしがみついていた。
なぜか、2人の兄弟が太郎と次郎という名前で、仲間だということはわかっていた。

やがて、ジョウシマと太郎と次郎の3人は、海岸にたどりつく。
「われわれが生きているとは、夢にも思わんでしょう」、太郎がいう。
「まっこと、味方の中に敵がいたとは思いますまい」、次郎がいう。
「さて、死出の山へお連れください」と、太郎がジョウシマにいって終わる夢だった。

夢の中の言い回しや服装から、昔の日本だということはわかる。
だが、太郎と次郎が何者で、夢で見る自分が誰なのかということはわからなかった。
同じ夢を繰り返し見るということは、過去に体験したことなのかもしれない。
昔の日本であることから、体験したのは自分の先祖かもしれない。

ジョウシマの両親は、すでにこの世にいなかった。
両親から生い立ちについての話を聞いた記憶はなかった。
また、両親の親や兄弟姉妹の話も、聞いたことがなかった。
ジョウシマは、夢に関係するかもしれない自分のルーツを調べることにした。

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