2020年1月6日月曜日

銘柄を明かさない理由R297 無敗の個人投資家たち~ジョウシマ ユウイチの場合~(後編)

第297話 無敗の個人投資家たち~ジョウシマ ユウイチの場合~(後編)

ジョウシマの両親は、すでにこの世にいなかった。
両親から生い立ちについての話を聞いた記憶はなかった。
また、両親の親や兄弟姉妹の話も、聞いたことがなかった。
ジョウシマは、夢に関係するかもしれない自分のルーツを調べることにした。

ジョウシマ ユウイチは、両親に長女のアキコとの4人家族だった。
両親はアキコが高校生、ユウイチが小学生のときに亡くなった。
家族でドライブに出かけた帰り、サービスエリアに入ろうとしたときのことだった。
減速した父親が運転する車は、前方不注意の大型トラックに追突された。

アキコとユウイチが病院で目覚めたとき、すでに両親は息を引き取っていた。
身寄りのなかったアキコとユウイチは、施設に預けられた。
アキコは高校を卒業すると地元の会社に就職し、ユウイチを大学に進学させた。
ユウイチが大学を卒業すると、服飾デザイナーが夢だったアキコはパリへと旅立った。

デザイナーとしては成功しなかったアキコだが、今はパリで結婚し幸せに暮らしている。
姉貴に聞いたところで、おそらく自分たちのルーツについては知らないはずだ。
ジョウシマは、両親の戸籍謄本を取り寄せた。
取り寄せた戸籍謄本によると、父親は徳島出身で、母親は京都出身だった。

ジョウシマは、外資系保険会社の調査を請け負う会社の社員だった。
ジョウシマは委託先の調査会社に、自費で両親の調査を依頼することにした。
「両親の素性がわかれば、調査に要した費用は全て支払うことを約束する。
徹底的に両親の素性を調べて欲しい」、ジョウシマは委託先の調査会社に告げた。

数ヵ月後、調査会社から報告書と請求書が送られてきた。
調査会社の報告書によると、母親は京都で代々続く商家の三女だった。
ジョウシマ姓の母親は、父親と恋に落ち、駆け落ち同然に家を出たらしい。
駆け落ち同然に家を出たあと、実家とは音信不通だったらしい。

調査会社の報告書によると、父親は徳島の地主である阿佐家の長男だったらしい。
京都で母親と知り合った父親は、跡目を弟に譲り、姓をジョウシマに変えたらしい。
その後、職を求めて東京へ出た両親は、アキコとユウイチを産み育てたらしい。
どこにでもありそうな話で、特別な先祖はいなかったってことか、ジョウシマは思った。

平教経(たいらののりつね)は、平家一門の武将で、壇ノ浦で死んだとされている。
だが、徳島県祖谷地方の伝説では、教経は壇ノ浦で死ななかったとされている。
伝説によれば、教経は壇ノ浦での敗戦後、安徳天皇を奉じて、祖谷山に入った。
のちに阿佐庄に移住して、阿佐氏を称したという。

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