2016年11月15日火曜日

銘柄を明かさない理由R156 狂乱相場の始まり

第156話 狂乱相場の始まり

大手外資系証券会社、赤い竜の会社が仕掛けた仕手戦。
仕手戦では、比較的、長い期間をかけて仕込みが行なわれる。
ある日、相場に関係なく上昇が始まる。
仕込みが完了した後、徐々に株価を釣り上げるのである。

ある大学生は授業には出ず、その株をトレードしていた。
俺って株の天才じゃね、凄すぎっしょ、学生は進級の単位が不足しつつあった。
ある会社員はマイホーム購入資金のほぼ全額で、その株を売り買いしていた。
株の儲けでマイホームが買えそうだ、会社員は勤務中も取引するようになった。

ある主婦は子供の教育費用に貯めた金の一部で、その株を売り買いしていた。
よかった、これからは節約しなくていいわ、主婦は散財を始めた。
ある高齢者は退職金の一部で、その株を買い保有していた。
これで老後は安泰だ、高齢者は退職金の残りで趣味の盆栽を買い始めた。

意外と知られていないが、資産の減少スピードは増加期間に比例する。
短期で増やした資産は、短期で減少する可能性が高いということである。
宝くじやギャンブルで一発、当てる人がいる。
その多くは数年後に、資産を使い果たすことは周知の事実である。

都内にある古い木造家屋。
2階の自室で、中学生の男の子は机に向かっていた。
そっか、ここでこのコマンドを入れればいいんだ。
男の子は自作した株の売買プログラム、アルキメデスを改良していた。

先日、商店街で母親の再婚相手に殴られそうになった。
止めに入ってくれた男の人は、ある証券会社の情報システムの人だった。
僕を探していたというその男の人と近くの喫茶店で話をした。
男の人は僕の話を、親身になって聞いてくれた。

だけど、アルキメデスのことを話すと、その男の人は急に顔つきが変わった。
僕は、その男の人に問われるまま、アルキメデスのソースコードを話した。
驚いたことに、その男の人は瞬時にいくつかの改善点を教えてくれた。
最後に男の人はいった。

「今、いった点を改善すれば、おそらく最強の株売買プログラムになる。
社長に君のプログラムを使わせて欲しいと掛け合ってみる。
今日は楽しかったよ、一緒に仕事ができるよう社長を説得してみるよ」
あの男の人は本当に社長に掛け合ったのかな、ふと男の子は思った。