2016年11月23日水曜日

銘柄を明かさない理由R163 天空の攻防

第163話 天空の攻防

大手外資系証券会社、赤い竜の会社が仕掛けた仕手戦。
アルカディアと淀屋の買いで、下がり続けていた株はストップ高となった。
その後、赤い竜の会社は本国へ支援を要請、資金を増強した。
かって天井だった株価近辺で、激しい攻防が繰り広げられていた。

大手外資系証券会社、赤い竜の会社のトレーディングルーム。
責任者の男が、部下のトレーダーに指示を出していた。
「いいか、売りの利益はすでにない、ここを突破されたら買いの利益が減ることになる。
何があっても、このラインは死守しろ、これ以上、株価を騰げさせるな」

ある証券会社の資産運用部署、通称アルカディア。
アルカディアには、1人の天才女性トレーダーがいた。
天才女性トレーダーの呼び名は、無敗の天然ことテン。
入社以来、数々の天然ぶりを発揮したテンは部署を転々とさせられた。

やがて、テンはアルカディアメンバーとなり、無敗のクイーンと出会う。
無敗のクイーンに才能を見抜かれたテンは、アルカディア初の専属社員になった。
テンは、嗤う男との仕手戦でストップ安だった株をストップ高にした。
テンは知らなかったが、今や兜町のトレーダーの間で、テンの名は知れ渡っていた。

ホント、しつっこいわね、しつこい男はモテないわよ、テンはバトルモードに入っていた。
テンの凄さは、瞬時に売買のタイミングを見抜くことと発注スピードだった。
例えば、1,000円で売りが出ているとき、テンは1,000円で買い注文を出す。
約定すると、すかさず1,001円で売り注文を出す、この間、わずか数秒である。

1回当たりの譲渡益は微々たるものだが、テンの運用額は増え続ける。
ホント、ヘタクソね、こんなトレードじゃ、わたしは落ちないわよ。
あっ、わたしには淀屋さんがいるから、何があっても落ちないけどね~。
人類が巨人と戦うアニメの曲をBGMに、テンは楽しそうにトレードを続けた。

含み損だった多くの個人投資家が、含み益になり利確した。
「ここまで早く株価が戻るとは、相場の神様っているのかもしれない」
「相場の神様ありがとう、もう二度と高値に飛びつかないようにします」
相場の神様は男の神ではなく、テンという女神だった。

大手外資系証券会社、赤い竜の会社のトレーディングルーム。
一進一退で取引が終わったその日、責任者の男に幹部から内線が入った。
責任者の男の要請が認められ、本国から追加支援が行なわれるとのことだった。
いい気になるのも今日までだ、我々の真の力を思い知るがいい、責任者の男は思った。