2016年11月30日水曜日

銘柄を明かさない理由R 最終話 天使の旅立ち(後編)

最終話 天使の旅立ち(後編)

東京国際空港の国際線ターミナル。
1人の男性と1人の女性が、1人の男を見送っていた。
「今度、会うときを楽しみにしている」調査会社に勤める男がいう。
「いつまでも待っているからね」天使の笑顔をもつ男の彼女がいう。

クリスマスのイルミネーションの中、天使の笑顔をもつ男が2人にいう。
「あなたから教わった無敗の投資手法が、世界に通用するってことを証明してきますよ。
しばらく寂しい思いをさせるかもしれないけど、必ず勝って帰ってくる」
ダウンジャケット姿の天使の笑顔をもつ男は、出国手続きに向かった。

「また、泣いちゃいそうです」天使の笑顔をもつ男の彼女がいう。
「我慢しなさい、泣きたいのは彼のほうかもしれないよ」調査会社に勤める男がいう。
天使の笑顔をもつ男は振り返ると、笑顔で手を振った。
天使の笑顔をもつ男の彼女は、大きく手を振った。

手荷物検査場の女性検査員は、スーツケースの中に1枚の写真があるのを見た。
満開の桜をバックに、両親と男の子と女の子が笑顔で写っていた。
「ご家族の写真ですか、微笑ましい写真ですね」女性検査員がいう。
「ありがとうございます、世界一の家族です」天使の笑顔をもつ男は笑顔で答えた。

搭乗時刻まで、まだ時間があるな、ラウンジで時間を潰すか。
天使の笑顔をもつ男は、ラウンジへ向かった。
ラウンジの受付で料金を支払うと、席に着きノートPCを起動した。
天使の笑顔をもつ男は、国内の大型株を大量に仕込んでいた。

これから、更に円安ドル高になるのは間違いない。
2020年の東京オリンピックへ向け、国内相場は上昇する。
帰国したとき、これらの株がどこまで騰がっているかだな。
天使の笑顔をもつ男は、保有株の株価を確認するとノートPCを閉じた。

「お隣、いいかしら」女性の声がした。
天使の笑顔をもつ男が顔を上げると、サングラスをかけた女性がいた。
高級ブランドのコートに身をつつんだ女性は、おもむろにサングラスを外した。
「見いぃ~つけた」サングラスを外したウィッグの女がにんまりと笑っていう。

「ど、どうして、ここに」天使の笑顔をもつ男が驚いた顔でいう。
「無敗の相場師キングから指令があったのよ。
無敗のエースをアメリカへ派遣する、ついてはアシストを頼むってね」
やがて搭乗時刻になり、2人の相場師は米国へ旅立った。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
「銘柄を明かさない理由R」は、本稿にて終幕します。
自身としては初めて書いた小説です。
もちろん、プロの方が書かれた小説の足元も及びません。

初めて書いた小説ですが、書いていて実に楽しかったです。
よく小説家は、作中の人物が勝手に動き出すといいます。
今回、小説を書くことによって、そのことを体感しました。
「俺の出番が少ないぞ」、「私はこんなキャラじゃない」など、よくいわれましたw

無敗のクイーン、アルカディアメンバー、無敗の天然ことテン、社長室秘書。
調査会社の女性社員、天使の笑顔をもつ男の彼女、ウィッグの女、定食屋の女性店主。
この世界は男性ではなく女性が回しているのかもしれないと、書いていて思いました。
最後に、自身が執筆中によく聴いていた曲のリストを残しておきます。

「Do They Know It's Christmas?」 by Band Aid

「紅蓮の弓矢」 by Linked Horizon

「残酷な天使のテーゼ」 by Yoko Takahashi

「この美しき残酷な世界」 by Yoko Hikasa

「誰がために」 by Ken Narita

「20th Century Boy」 by T.REX

「また君に恋してる」 by Fuyumi Sakamoto