2016年11月20日日曜日

銘柄を明かさない理由R159 巧妙な仕手戦

第159話 巧妙な仕手戦

大手外資系証券会社、赤い竜の会社が仕掛けた仕手戦。
赤い竜の会社が仕掛けた仕手戦は巧妙だった。
通常の仕手戦では、比較的、長い期間をかけて仕込みが行なわれる。
そして、ある日を境に株価を急落させるのである。

だが赤い竜の会社が仕掛けた仕手戦は違った。
比較的、長い期間をかけて仕込みが行なわれるところは同じだった。
だが天井をつけたあと、長い時間をかけて株価を下げるのである。
ときおり上げながら下がり続ける株に、多くの個人投資家が翻弄された。

株価が天井をつけてから、株価は半値以下になっていた。
多くの個人投資家が含み損の状態、あるいは損失を確定していた。
「あのとき売っておけばよかった」、「もう一度、あの株価に戻してください」
相場には後悔する多くの個人投資家たちの思いが満ち溢れていた。

都内の吹き抜けのアトリウムがあるオフィスビルの1室。
その部屋には大手外資系証券会社、赤い竜の会社の幹部たちがいた。
円卓の中央奥に座った男が残忍な笑みを浮べていった。
「最終ステージの仕上げだ、一気にサルどもを地獄へ突き落としてやれ」

都内のある調査会社。
調査会社に勤める男は、ある株について調べていた。
調べていた株は、株式評論家が推奨してから騰がり始めた株だった。
ある日を境にして、株価が上げ下げを繰り返しながら下げ続けていた。

やはりな、男は天井をつけた日を境に急激に増えている出来高に気がついた。
誰かが急激に下がらないように、買いを入れて株価をコントロールしている。
これだけの出来高を成立させることができるのは限られている。
あの女に教えておくか、調査会社の男は思った。

ある休日、調査会社の男は自宅近くの河川敷に寝転んでいた。
やがてトレーニングウェアに身を包んだ無敗のクイーンがやってきた。
「ある株が巧妙に株価操作されている」調査会社の男が起き上がりいう。
「知っているよ、巷で話題の株だろ」無敗のクイーンがいう。

「何か手を打つつもりなのか」調査会社の男がいう。
「さあな、貴様も株をやっているんだろ、貴様は何もしないのか」無敗のクイーンがいう。
「何も考えていないし、仮に何かしても止めることはできない」調査会社の男がいう。
「思っていたより、つまらん男だな」無敗のクイーンは冷たい表情でいうと走り去った。