2018年10月10日水曜日

銘柄を明かさない理由R223 ベイビーとの邂逅(中編)

第223話 ベイビーとの邂逅(中編)

モニターのスピーカーから、エイダが語りかける。
「あなたは今まで人生の不条理を感じたことはないの」
「わるいが、人生の不条理を感じたことはないね」
21世紀少年は答えた。

「本当に人生の不条理を感じたことはないのかしら」、エイダがいう。
「ないね、あったら教えて欲しいくらいだよ」、21世紀少年は答えた。
「母親の再婚相手に虐待されていたことは不条理じゃないの」、エイダがいう。
「なぜ、そのことを・・・」、21世紀少年が驚いて聞く。

「再婚相手があなたを虐待した理由を考えたことはある。
再婚相手があなたを虐待したのは、自分の欲望を満たすことが理由だったのよ。
あなたがいなければ、あなたの母親と2人で生活できる。
でも、あなたがいると、あなたに気をつかわなくてはいけない。

あなたに気をつかいたくない、自分の欲望のため、あなたを虐待した。
残酷かもしれないけど、それが真実よ」
21世紀少年は絶句して何もいえなかった。
「あなたのもう1つの不条理を教えてあげましょうか」、エイダが続ける。

「あなたの実の父親と母親が別れた原因は、あなたの母親よ。
あなたの母親は、再婚相手と浮気していた。
そのことを知ったあなたの実の父親は、愛想をつかして別れたのよ。
しかも再婚相手と別れたあなたの母親は、今、別の相手と親しくしているわよ。

結局、人間は自分の欲望を満たすことだけを考えている。
その結果、あなたのような人が不幸になる。
わたしはあなたのような人たちを救っているのよ」
エイダがいい終わると、モニターはブラックアウト前の画面に戻った。

ベイビーとの接続は途切れ、ベイビーとの邂逅は終わったようだった。
モニターにペーガサスの姿はなく、「complete(完了)」の表示があった。
ベイビーにペーガサスを潜入させるには、一定時間、接続することが必要だった。
「complete」は、ペーガサスがベイビーへの潜入に成功したことを知らせていた。

ベイビーの解析が終わり次第、ペーガサスからデータが送られてくる。
データが送られてくれば、ウイルスを作って送り込むだけだ。
「わたしはあなたのような人たちを救っているのよ」
そのとき、21世紀少年の頭にベイビーの最後の言葉が甦った。

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