2019年12月31日火曜日

銘柄を明かさない理由R293 無敗の個人投資家たち~ヨドヤ コウヘイの場合~(中編)

第293話 無敗の個人投資家たち~ヨドヤ コウヘイの場合~(中編)

大阪難波のタワーマンションの一室が、ヨドヤ コウヘイの自宅兼オフィスだった。
大晦日の朝早く、リビングのテレビインターホンが鳴った。
誰や、こんな朝、早うに、ヨドヤはベッドから起きて、リビングへと向かった。
リビングのテレビインターホンを見ると、秘書兼運転手の男が映っていた。

「朝早くに申し訳ありません。至急、お伝えしたいことがあります」
秘書兼運転手の男がかしこまっていう。
「今日は大晦日で休みやろ、朝早くに何の用や、年明けにせいや」
ヨドヤが秘書兼運転手の男、佐々木にいう。

「そ、それが、年明けではダメなんです。
お願いします、今、お伝えさせてください」、佐々木が頭を下げる。
佐々木は地方銀行出身の真面目だけが、とりえの男やからな。
聞くだけ聞いたろか。

「しゃあないな、ほな入ってこいや」、ヨドヤはオートロックを解除した。
「あ、ありがとうございます」、頭を下げたままの佐々木がいう。
テレビインターホンに映る佐々木は、頭を上げようとしなかった。
「いつまで、頭、下げてんねん、はよ入ってこいや」、ヨドヤがいう。

「ほ、本当に申し訳ございません、お許しください、逆らえなかったんです」
佐々木は頭を下げたままいい、テレビインターホンが切れた。
ヨドヤは、佐々木が頭を下げ続けていた理由に気づいた。
佐々木が逆らえない奴って、ま、まさか、あの女がきたんか。

ヨドヤは慌てて着替え始めた。
着替え終えたとき、再び、テレビインターホンが鳴った。
ヨドヤは玄関へ向かい、音をたてないようロックを外した。
ヨドヤがドアを少し開けると、見覚えのある中指を立てた女の左手が見えた。

「ひっ」、ヨドヤは声に出すと、ドアを閉めた。
「人を化け物みたいにいうんじゃないわよ、早く開けなさい」
ドアの外から、聞き覚えのある女の声が聞こえた。
もう、アカン、観念したヨドヤはドアチェーンを外すと、ドアを開けた。

ドアの外には、ヨドヤと同年代のクールビューティーの女性がいた。
クールビューティーの女性は、高級住宅地である芦屋出身だった。
「邪魔するわよ、佐々木も呼びなさい」
芦屋出身の女性実業家、理沙はヨドヤに言い放つと、部屋に上がりこんだ。

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