2015年9月21日月曜日

銘柄を明かさない理由38

登場人物紹介
・先輩:Yの取引口座があるA証券の長期運用部門を担当する天才女性トレーダー
・後輩:先輩の後輩
・A:A証券に取引口座を持つ、若くして頭脳派の無敗の個人投資家
・J:A証券に取引口座を持つが、自身の口座では取引きしない無敗の個人投資家
・先生:「売り」「買い」のどちらもとれる大物相場師
・Y:運用額は小額ながら、無敗の個人投資家、当プログの管理人

その男は、家族と近くの公園に来ていた。
男は、妻と子供達が遊具で遊んでいるのを、ベンチに座って見ていた。
ふと、あの子は、今頃、どうしているかなと思った。
男とその子の母親は、中学校の同級生だった。

最初に彼女からその話を聞いたのは、同窓会の席だった。
彼女いわく、主人が女を作って出て行った。
主人が買った家族名義の株があるが、運用の仕方がわからないという話だった。
誰かが、減るものではないから、そのままにしておけばといい、その場は笑いで終わった。

数日後、男はフリーのメールアドレスを取得すると、彼女にあるメールを送った。
「絶対に損はさせない。今ある株は全て売って、次に指示する株を買え」と。
彼女からは「ご指示通りにします。アドバイスありがとうございます」と返信があった。
男が、彼女に株の売り買いを指示するようになってから、10年近くになる。

先日の同窓会で、彼女に「ひょっとしてメールでのアドバイス、J君?」と聞かれた。
「とんでもない、株なんて怖くて一度も触ったことないよ」と答えておいた。
彼女からのメールによると、彼女達の資産は順調に増えて、学費の目処もついたらしい。
パパという声に我にかえると、子供達がこちらに向かって、手を振っていた。