2015年6月14日日曜日

近未来の休日

その若者は、休日に地方の図書館を訪れることを趣味にしていた。
図書館を訪れる目的は、希少本探しだった。
多くの本は、電子図書化され、いつでも読むことができる。
地方の図書館にいけば、たまに電子図書化されていない希少本に出会えることがある。

ある休日、若者は自動運転の電気自動車で、海の見える図書館にやってきた。
図書館の入り口にある網膜認証システムで、ゲートを開錠する。
昔の図書館には必ず、人がいたらしいが、今は全てが無人化されている。
館内の端末で、発行部数が少ない条件で検索すると、1冊の本がヒットした。

本のタイトルは、「或る相場師の半生」、著者はY、どうやら自費出版らしい。
閲覧ボタンを押すと、誘導システムが起動、案内に従い、書架へ向かう。
書架で目的の本を手に取ると、思ったとおり、寄贈の印がある。
海に面した閲覧コーナーで、ドリンクを片手に本を読み始める。

本には、Yの半生や株式投資による資産運用について書かれていた。
若者は株式投資をしたことはなかったが、いつしか時間を忘れて読み始めた。
本を読み終えたのは、夕暮れ時だった。
借りようとしたが、他の人が読みたいときになければ困ると思い、書架へ戻した。

若者は電気自動車へ乗り込むと、自宅への経路をセットした。
走り始めた車の中で、若者は人生の新たな楽しみを見つけた気がしていた。
若者は、Yの時代の曲を聴いてみることにした。
声で曲名を伝えると、モニターから曲が流れ始めた。