2020年7月16日木曜日

銘柄を明かさない理由R342 出資者の正体(前編)

第342話 出資者の正体(前編)

"ジョーカー"が見えなくなると、物陰にいた1人の男がジョウシマに近づいてきた。
「奴は株式投資の経験がない素人です」、ジョウシマが近づいてきた男にいう。
「だろうな、奴は名のない組織に属する、通称"ジョーカー"と呼ばれる男だ。
名のない組織の活動資金はしれているので、貴様たちに頼ってきたのだろう。

我々が資金を供給するので、力になってやれ、無敗のJこと、無敗のジョーカー」
近づいてきた男がいうと、無敗のジョーカーこと、ジョウシマは不敵な笑みを浮かべた。
「さて、帰るか」、ジョウシマに近づいてきた男がいう。
「そうですね、帰りますか」、ジョウシマが近づいてきた男にいう。

最寄り駅へ歩く道すがら、ジョウシマに近づいてきた男がいう。
「いつ頃、資金が必要だ」
ジョウシマが前を見たまま、近づいてきた男にいう。
「例年通り、外国人投資家の売買が少なくなる夏にお願いします」

ジョウシマに近づいてきた男も、前を見たままいう。
「わかった、いつもどおり、リアルタイムで口座に振り込ませてもらう」
ジョウシマが前を見たまま、近づいてきた男にいう。
「ありがとうございます。日本一の株屋のチーフトレーダー、内海さん」

内海が前を見たまま、ジョウシマにいう。
「話は変わるが、NYダウ暴落の仕掛け人が、判明した。
仕掛けたのは、米国のニック・ライアンというカリスマトレーダー。
ニックは大手証券会社に勤務しており、暴落の発端は奴の売り注文らしい」

「"レッドブル(赤い雄牛)ファンド"の、ニック・ライアンですか。
"レッドブルファンド"は、大きな売りをしたことがないファンドだと聞いています。
まさか、今回の暴落の発端が、"レッドブルファンド"とは、信じられない」
ジョウシマは驚き、思わず内海を見ていう。

内海が前を見たまま、ジョウシマにいう。
「残念ながら、暴落の発端はニックの売り注文で間違いない。
だが、ニックに売りを指示した奴、暴落の首謀者がいることがわかった。
今回の暴落の首謀者は、劉宋明(りゅうそうめい)という名の男だ」

「りゅうそうめい?、何者ですか」、ジョウシマが内海に尋ねる。
「知らないのも無理はない、劉は東南アジアの金融施策に多大なる影響力を持つ男だ。
また、東南アジア以外の国とも、独自のネットワークを築いているらしい。
劉のネットワークは、"クーロンズ・アイ(九龍の眼)"と呼ばれている」、内海がいう。

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