2020年7月13日月曜日

銘柄を明かさない理由R340 ダブル・ジョーカー(中編)

第340話 ダブル・ジョーカー(中編)

都内にあるマンションの一室。
その一室は、外資系証券会社に勤務する組織の男、通称"ジョーカー"の自宅だった。
"ジョーカー"は組織のデータベースで、ある男の素性を調べ終えたところだった。
男の名は、ジョウシマ ユウイチ、外資系保険会社の調査を請け負う会社の社員だった。

さて、ジョウシマにどうコンタクトするか。
"ジョーカー"は、PCに表示されたジョウシマのデータを再度、読み返した。
この男、株のブログもやっているのか。
ジョウシマのブログを見つけた"ジョーカー"は、ある方法でコンタクトすることにした。

"ジョーカー"は、ブログの連絡先であるメールアドレスにメールを送ることにした。
「ブログを拝見した田中と申します。
無敗で連戦連勝の投資手法を、是非ともご教示いただきたく思います。
一度、お会いいただけないでしょうか」

2日後、"ジョーカー"がメールを確認すると、ジョウシマからのメールが届いていた。
「来週の土曜、17時に兜神社で待っている」という短い返信だった。
兜神社って、どこだ、"ジョーカー"は、兜神社を検索した。
兜神社は証券界の守り神で、東京証券取引所のすぐ近くにあるらしい。

当日、"ジョーカー"は、兜神社へ向かうべく、自宅を出た。
"ジョーカー"は、電車を乗り継ぎ、兜神社へ向かった。
"ジョーカー"が、兜神社に着いたとき、狭い境内には誰もいなかった。
腕時計を見ると、約束の時間の15分前だった。

早く着きすぎたか、"ジョーカー"は兜神社の由来を記した案内板を読んだ。
狭い神社だが、歴史のある神社なんだな、せっかく来たんだ、賽銭でも投じておくか。
"ジョーカー"は、無神論者で無宗教だった。
だが、賽銭を投じ、今後のご利益を祈願することにした。

"ジョーカー"は水盤に向かうと、右手で柄杓を取り、水盤の水で左手を洗った。
左手を洗うと、柄杓を左手に持ち替え、右手を洗った。
右手を洗うと、柄杓を右手に持ちかえ、左手に水を受け、口をすすいだ。
静かにすすぎ終わると、水をもう一度左手に流した。

手水の作法を終えた"ジョーカー"は神前に進んだ。
銀色の賽銭箱に、"ジョーカー"は賽銭を投じた。
"ジョーカー"が今後のご利益を祈願し終わったとき、背後から男の声がした。
「君がメールをくれた田中さんかな」

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