2020年10月4日日曜日

銘柄を明かさない理由R355 反撃の狼煙(後編)

第355話 反撃の狼煙(後編)

内海が"名のない組織"のWEBサイトに、"反撃の狼煙"について入力した数週間後。
スイスで最も美しい教会があるといわれる街。
街の外れには、スプリングベルが所有する豪邸があった。
豪邸には多くの執事がおり、彼らを取り仕切っているのが、秘書のアレックスだった。

アレックスは、ドイツのケルンで生まれ育った金髪で青い眼を持つアーリア人だった。
また、はるか昔から聖杯を守る「ケルンの騎士団」の一員でもあった。
アレックスが、スプリングベルの秘書になったのには理由があった。
「ケルンの騎士団」から、聖杯とスプリングベルを守るよう指示を受けていたからだった。

休日の夜、豪邸内にある自室で、アレックスはPCに向かっていた。
PCの受信トレイに、「ケルンの騎士団」からのメールが届いていた。
「ケルンの騎士団」は、聖杯を守るだけでなく、ドイツを守る活動も行っていた。
メールには、近日中に「ケルンの騎士団」が起こす、ある奇妙な行動が記されていた。

歴史ある「ケルンの騎士団」は、各国の組織とつながりを持っていた。
特に親しい関係にあるのは、第二次大戦の同盟国だった日本とイタリアの組織だった。
今回の行動の依頼主は、日本の組織である"名のない組織"らしかった。
この奇妙な行動の目的は何なんだろう、アレックスには目的がわからなかった。

同時刻、アメリカ合衆国ニューヨーク州を南北に走るブロードウェイ(Broadway)。
ブロードウェイのタイムズスクエア付近では、その周辺に劇場街が広がっている。
日本人舞台俳優でスリムな長髪の男は、その日の公演を終え、楽屋に戻ってきた。
男は、"仮面の相場師"こと、アンザイ カズマだった。

アンザイは"無敗のキング"ことジツオウジ コウゾウから、相場の英才教育を受けていた。
舞台俳優の収入よりも、相場での稼ぎの方が多い兼業相場師でもあった。
楽屋に戻ってきたアンザイを、マネージャーであるエリックが待っていた。
エリックは、アンザイをねぎらうと、次の作品のオファーがあったと伝えた。

エリックは、次の作品のアンザイの出演料が、過去最高額であること。
近日中に、大々的な宣伝活動が行われることを伝えた。
俺の出演料が過去最高ということは、エリックに入る金も過去最高なんだろ・・・。
嬉しそうに話すエリックを見て、アンザイは笑みを浮かべた。

「多くの企業が協賛してくれるらしい、新作らしいが成功間違いなしだ」
エリックは、次の台本をテーブルに置くと、笑いながら退室した。
多くの企業が協賛する新作って、どんな作品なんだ、アンザイは台本を手に取った。
手に取った台本のタイトルは「Nine dragon eyes(ナインドラゴンアイズ)」だった。

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