2024年6月21日金曜日

【小説】まとめ屋~vol.376~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
Z:お疲れ
B:おつかれ
X:Yのバカはいねえのか
Z:今日は来ていないわ
B:出張してるんじゃないかな
X:何の出張だ
B:支援している相手の件で出張するっていってた
X:裁判に証人で出んのか
B:依頼はまだだけど、確認することがあるらしいよ
X:証人費用の確認でもすんのか
Z:wwwwwwwwww
B:それはないと思うw
X:裁判はどうなってんだ
B:そのことを確認するんじゃないかな
X:弁護士が教えてくれるんじゃねえのか
B:守秘義務があるので教えてくれないと思う
B:裁判所には裁判資料が保存されてる
B:裁判所に行って、資料を閲覧するんじゃないかな
X:弁護士でなくても閲覧できんのか
B:基本的には誰でも閲覧できるよ
B:事件番号、原告、被告の名前があれば、資料を用意してくれる
B:あとは時間の許す限り、閲覧することができる
X:閲覧しているときはガン見されんのか
B:チラ見はされるだろうけど、ガン見されたりはしないよ
X:こいつはバカだなと思ったらガン見すんだろ
Z:wwwwwwwwww
B:w
X:あのバカはヒマだってことだな、さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
Z:わたしも寝るわ、おやすみ
B:おやすみ

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「また、まとめ屋のサイト見てたんですか」、声をかけた男がいう。
「最近の裁判記録の閲覧手続きはどうなっている」、声をかけられた男がいう。
「以前と同じで、対面での本人確認ですよ」、声をかけた男がいう。
「ウェブ化される予定はあるのか」、声をかけられた男がいう。
「個人情報が多いので、かなり先でしょうね」、声をかけた男がいう。
「閲覧するのは弁護士くらいだろうしな」、声をかけられた男がいう。
「弁護士以外の閲覧もあるみたいですよ」、声をかけた男がいう。
「弁護士以外だと誰が多いんだ」、声をかけられた男がいう。
「最も多いのはマスコミでしょうね」、声をかけた男がいう。
「なるほどな、あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

裁判所が保存する事件記録等の保存や廃棄に関する規律は、保存規程及び運用通達において定めている。
完結した事件の事件記録等は原則として第一審裁判所で保存するものとし、その保存期間は事件や書類の種類によって異なるものとなっている。
例えば、民事訴訟事件については、判決原本の保存期間は事件の完結から50年としているが、事件記録の保存期間は事件の完結から5年としている。また、少年事件の事件記録(いわゆる「法律記録」)については、審判書とその他の書類とで保存期間が区別されておらず、記録全体について、少年院送致などの保護処分決定によって完結した場合には、少年が26歳に達するまで保存するものとしている。
(「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」令和5年5月最高裁判所事務総局)
「予告犯」筒井哲也氏より
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
ネットの誹謗中傷をなくすにはどうしたらよいかをテーマに書いています。
誹謗中傷された場合の法的手続きですが、費用対効果は決してよいとはいえません。
また、相手から虚偽告訴罪で訴えられる可能性もあります。
誹謗中傷されたら、やり返さずに弁護士に相談されることをオススメします。
相談すれば、どのような罪に問えるかなど、アドバイスしてもらえることが多いです。
「まとめ屋」の方法はリーガルチェックを受けていないため、行わないでくださいw

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