2019年2月23日土曜日

銘柄を明かさない理由R255 いつか必ず天下を(前編)

自身のオリジナル小説である「銘柄を明かさない理由R」。
新たな「クーロンズ・アイ編」を開始した。
「クーロンズ・アイ編」は、ドイツのケルンから始まった。
その後、自身が若かりし頃、訪れたことのあるスイスへと舞台へ移した。

タイトルのみ決めて書き始めた「クーロンズ・アイ編」。
これからのストーリーは、中国を舞台に展開する。
ワールドワイドに展開するストーリーは、自身も予測不能だ。
それでは「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

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第255話 いつか必ず天下を(前編)

日本で満洲と呼ばれる地域は、建国時の地域全体を意識することが多い。
現在の遼寧省、吉林省、黒竜江省の3省と、内モンゴル自治区の東部を範囲とする。
1900年、ロシア軍によって清国人数千人が虐殺されるアムール川事件が起きた。
1904年から勃発した日露戦争は日本の勝利に終わった。

1931年、大日本帝国は満洲事変を契機に満洲を占領、翌1932年、満洲国を建国した。
満洲国は清朝最後の皇帝であった愛新覚羅溥儀を元首、後の皇帝とした。
日本は南満洲鉄道や満洲重工業開発を通じて、産業投資を行なった。
不毛の地ばかりだった満州に農地が多数開墾され、荒野には工場を建設して開発した。

満州では治安が良くなり、交通が開け、貨幣が統一された。
これらの経済発展を受けて、中国民国側から豊かさを求めて多くの移民が流入した。
満州国地域における日本人以外の人口は満州国建国以前よりも増加した。
1932年に約3000万だった人口は、終戦までには約4500万人に増加した。

1914年(大正3年)6月、1人の男が大連港に降り立った。
東北の方向を望むと、澄み切った青空が広がっていた。
澄み切った青空を背景に、大和尚山が雄大な姿でそびえ立っていた。
標高663.1mの山だったが、その威容に男は魅入られていた。

男は、神戸の高等小学校を卒業すると、すぐに貿易商へ奉公に出た。
男は一日中、休みなしで働かされた。
「いまは下働きの小僧だが、いつか必ず天下に大号令を出してやる」
休みなしで働く男は、胸に思いを秘めていた。

ひたすら、男が仕事と勉強に明け暮れる毎日。
1914年の春、男が勤務する会社が倒産した。
主人は毎日、金策に追われ、債権者は朝から晩まで取り立てにやってきた。
小僧の身ながら、倒産の惨めさをいやというほど思い知らされた。

男は勤務先の倒産に直面して、あることを決意していた。
「いくら懸命に働いても、人に使われていては会社が倒産したらまた失業だ。
こんなことを、繰り返していては、天下を取ることなどおぼつかない。
どうせやるなら、ワシひとりの力でやってみせよう」

1914年6月、大連港に降り立った男は、大連の洋服生地問屋に世話になった。
同年6月28日、オーストリア皇太子がセルビアの青年に暗殺された。
同年7月28日、オーストリアはセルビアに宣戦した。
同年8月1日、ドイツがロシアに宣戦、英仏が参戦、第一次世界大戦が始まった。

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