2019年2月8日金曜日

銘柄を明かさない理由R252 後を継ぐ者(後編)

自身のオリジナル小説「銘柄を明かさない理由R」。
先日から、「クーロンズ・アイ編」を書き始めた。
よく、小説を書き始めると、登場人物たちが勝手に動き始めるといわれる。
自身は今までこのことを実感しているが、今も実感しているw

書き始めると登場人物たちが勝手に動きだすため、いくらでも書ける気がしている。
自身の定年はまだ先で、定年後は継続雇用には応じないことにしている。
相場師以外に起業も考えているが、作家もいいかもしれないと思い始めている。
それでは、「銘柄を明かさない理由R クーロンズ・アイ編」をお届けするw

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第252話 後を継ぐ者(後編)

教会に着いた春鈴(シュンリン)は、教会の敷地に倒れている神父を見つけた。
春鈴は倒れている神父に駆け寄った。
「神父さん、どうしたの、大丈夫」
春鈴は倒れている神父に呼びかけた。

年老いた青い目、長身、やせ型の神父は目を開いていった。
「おお、春鈴か、わるいが手を貸して立たせてくれんか」
春鈴は神父の手を掴むと、小さな体の全体重をかけて、立たせようとした。
神父は片手の杖を使い、よろけながらも立ち上がることに成功した。

「ありがとう春鈴、最近、歳のせいか、急に意識がなくなることがあってな。
お礼をしたいので、お祈りが終わったら部屋においで」、神父がいう。
「大丈夫でよかった。お祈りが終わったら部屋へいくね」
春鈴と年老いた神父は、教会へ向かって歩き出した。

お祈りが終わった春鈴は、神父の部屋へ向かった。
春鈴が部屋のドアをノックすると、中から神父が「お入り」といった。
神父の部屋は、最低限の設備や家具しかない質素な部屋だった。
「さあ、お座り」、神父が春鈴に椅子に座るよう促した。

春鈴は椅子に座ると、初めて入った神父の部屋を珍しそうに見ていた。
神父は食器棚から、古びた銀の把っ手が2つついたカップを取り出した。
テーブルに置いたカップに、冷蔵庫から取り出したグレープジュースを注いだ。
神父は春鈴に「助けてくれたお礼だよ」といい、カップを差し出した。

「いただきます」、春鈴は美味しそうにグレープジュースを飲んだ。
飲み終わった春鈴に、神父が「美味しかったかい」という。
「うん、美味しかった」、春鈴が笑顔で答える。
「助けてくれたお礼に、そのカップは春鈴にあげよう」、神父がいう。

「貰ってもいいの」、春鈴が神父に確認する。
「いいとも、ただ大事にしていたカップなので、春鈴にも大事にして欲しいんだ。
そのカップには名前があるんだよ」、神父がいう。
「なんて名前」、春鈴が聞く。

「聖なる杯っていう名前だよ」、神父がいう。
「聖なる杯って、素敵な名前、ありがとう神父さん、大事にするね」、春鈴がいう。
家に帰る春鈴を見送る神父は、数十年前、スイスに来たケルン騎士団の男だった。
「聖杯はあの子に引継がれた、全ては神の仰せのままに」、神父はつぶやいた。

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