2019年2月6日水曜日

銘柄を明かさない理由R250 ケルンの騎士団(後編)

第250話 ケルンの騎士団(後編)

聖遺物のひとつとされる、聖杯はいくつか存在する。
聖杯の1つは、エルサレム近くの教会にあったとされるものである。
7世紀、ガリアの僧がエルサレム近くの教会でそれを見て、触れたと証言している。
銀でできており、把っ手が2つ対向して付いていたというが、現在の所在は不明。

あと、3箇所にある杯も、聖杯だといわれている。
3箇所とは、ジェノヴァ大聖堂、バレンシア大聖堂、メトロポリタン美術館である。
これらの3箇所の中に、ケルン大聖堂は含まれていない。
だが、ケルン大聖堂には、エルサレム近くの教会にあったとされる杯があった。

ケルン大聖堂に聖杯が持ち込まれてから、聖杯を守る騎士団が誕生した。
「ケルンの騎士団」と名づけられた騎士団の使命は、命を賭して聖杯を守ることだった。
深夜、ケルン大聖堂の一室。
部屋に入ってきた男の1人が、入団を認められたばかりの男にいった。

「アメリカ軍は、刻々とケルンに近づきつつある。
いずれ、ケルンも戦場と化すだろう。
一刻も早く、聖杯を安全な場所へ移動しなくてはならない。
中立国であるスイスへ聖杯を移動して欲しい」

入団を認められたばかりの若い男は、頭を上げていった。
「仰せのまま、聖杯を移動いたします」
部屋に入ってきた男の1人が、入団を認められたばかりの男に紙を手渡していった。
「その紙に聖杯に関する注意事項が書いてある」

紙を受け取った入団を認められたばかりの若い男がいう。
「もし、不測の事態があった場合は、どうすればよいのでしょうか」
部屋に入ってきた男の1人がいう。
「全ては神の仰せのままに」

翌朝、入団を認められた若い男は、ケルン中央駅にいた。
ケルン中央駅は、ドイツ鉄道の主要鉄道駅である。
駅はケルンの中心部にあり、ケルン大聖堂に程近い。
大聖堂にとても近いので、ジョークで駅礼拝堂と言われることもある。

入団を認められた若い男は、スイスへ向かうための切符を購入した。
駅の構内は、避難する大勢の人で混雑していた。
これから向かうスイスで、何が待ち受けているのかはわからない。
入団を認められた若い男は、聖杯の入ったトランクを携え、改札へ向かった。

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