2023年8月9日水曜日

【小説】暴走している株ブログに思うこと~vol.219~

ある日の深夜、あるチャットスペースで会話が始まった。

X:お疲れ
Z:お疲れ
X:Yは来ていないのか
Z:さっきまでいたわよ
X:あのバカ、俺が来るから逃げたな
Z:wwwwwwwwww
X:そういや、Zの相手はどうなってんだ
Z:これから次のステージよ
X:長かったな
Z:このステージの準備だけで3年はかかったかしら
X:よくやるな
Z:Yの3年越しの案件も動くみたいよ
X:前にいってた時期を待ってたやつか
Z:そそ
X:おまえらはヒマなのか
Z:wwwwwwwwww
X:どちらもネットニュースになんのか
Z:たぶんだけど、ならないと思う
X:相手からすると、そんな昔の話されてもだろうな
Z:wwwwwwwwww
X:Yは何してんだ
Z:相談が多くて忙しいっていってたわ
X:どうせ自分からトラブルに首つっこんでんだろ
Z:wwwwwwwwww
X:本当、おまえらだけは敵に回したくねえわ
Z:wwwwwwwwww
X:さてとそろそろ寝るわ、おやすみ
Z:私も寝るわ、おやすみ~B

彼らのネット歴は長く、法に抵触しない範囲で遊んでいた。
彼らは遊んでいたが、その遊びはいつも誰かのためだった。
そんな彼らが愛読しているのは「予告犯」というタイトルのマンガだった。
チャット画面を閉じた彼らは、ネタ探しのため、ネットサーフィンを始めた。

彼らのネット歴は長かったが、そんな彼らにも知らないことがあった。
彼らは、関わった一部の人から、「まとめ屋」と呼ばれていた。

同時刻、警視庁サイバー犯罪対策課
「交替の時間ですよ」、1人の男がPCを観ている男の背後から声をかけた。
「もう、そんな時間か」、声をかけられた男が振り返っていう。
「また、まとめ屋のサイト見てたんですか」、声をかけた男がいう。
「YとZの3年越しの案件が動くらしい」、声をかけられた男がいう。
「関係先に連絡しておきます」、声をかけた男がいう。
「前に知らせてから、準備しているだろうがな」、声をかけられた男がいう。
「『予告犯』読みましたよ、声をかけた男がいう。
「どうだった」、声をかけられた男がいう。
『予告犯』ならWSI訴訟』で被害者を支援しますね」、声をかけた男がいう。
「だろ、あとはよろしく」、声をかけられた男がいう。
「了解」、声をかけた男はいうと、席を立った男と入れ替わりに席に座った。

「WSI訴訟」は、WSI(ワールド株式投資)による投資詐欺の民事訴訟。
「プロ向けファンド」は、主として、証券会社や銀行、投資会社などの「プロ投資家」(適格機関投資家)に売るために組成されたファンドをいい、広く一般消費者に向けて売られることは想定していなかった。そのため、これまで「プロ向けファンド」の運用・販売を行う事業者は、「登録」よりも条件や規制の緩い金融庁への「届出」で済み、不当行為に関する行政処分は定められてなかった。

WSIは「プロ向けファンド」を悪用。「当社は金融庁に届出をした業者です」「当社はプロ投資家を対象としたプロ向けファンドを運用している業者です」などと、主にインターネットで消費者を勧誘して、多くの被害をもたらした。
「プロ向けファンド」が一般消費者に向けて売られることは想定していなかったため、WSIへの損害賠償請求は難しいと思われていた。だが、被害者である原告が、WSIの不法行為を立証したことにより、満額に近い請求額が認められた。

「WSI訴訟」以降、「プロ向けファンド」を悪用した投資詐欺を防ぐため、金融商品取引法(金商法)の見直しが行われ、この改正金商法は2015年5月27日に成立し、2016年3月1日に施行されている。
これにより、「プロ向けファンド」を一定の要件を満たさない一般の投資家には売ることが禁止され、届出業者に対する規制が厳しくなり、問題のある届出業者には業務停止命令を含む行政処分が行えるようになっている。

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