第387話 本間の荒行(中編)
東北地方の山奥。
長年、使われていない荒れ果てた神社があった。
鳥居は傾き、神社の至る所は長年の風雨で傷んでいた。
手入れする者もいないため、敷地内には雑草が生い茂っていた。
寒さ厳しい冬のある日。
雪が積もる境内に、5人の男たちがやってきた。
男たちはリュックを背負ったまま、神社の様子を確認した。
確認が終わると、リュックを下ろし、持参した道具で神社の修繕に取り掛かった。
ある者は、穴の開いた屋根に、板を打ちつけた。
ある者は、穴の開いた壁に、板を打ちつけた。
ある者は、板間に開いた穴に、板を打ちつけた。
神社の修繕を終えた男たちは、傾いた鳥居を直し始めた。
周辺の木を何本かノコギリで切ると、傾いた鳥居の周りに足場を作った。
鳥居にロープをかけると、全員が力を合わせ、引っ張ることで、傾きを直した。
鳥居の傾きが直ると、足場を解体、足場の木を短く切り、薪(たきぎ)にした。
焚火の周りで、暖をとる男たちは無言だった。
あらかじめ、決めていたのか、神社にやってきてから、誰も言葉を発していなかった。
陽が落ちると、男たちは焚火の周りで、食事をとった。
食事を終えた男たちは、神社の中に入り、持参した寝袋で就寝した。
夜明けとともに、目を覚ました男たちは、薄い白木綿の単衣に着替え、外に出てきた。
庭で火を起こすと、近くにある小さな滝へ向かった。
滝に着くと、順に両手を合わせ、厳寒の中、滝に打たれた。
寒さに震えながら、滝から帰ってきた男たちは、暖を取りながら、食事をとった。
しばらくすると、リーダーらしき男が、他の4人に目で合図した。
男たちは立ち上がると、近くの滝へ向かい、滝に打たれた。
神社に戻ると、再び、無言のまま、焚火で暖をとった。
厳寒の中、滝に打たれて、焚火で暖をとる。
陽が落ちるまで、同じことが繰り返し行われた。
陽が落ちて、食事をとった男たちは、神社の中に入った。
やがて、神社の中から、男たちの声がした。
「三山」、「三川」、「三空」、「三兵」、「三法」、「これ、酒田の五法なり」
神社の中から、何度も同じ言葉を繰り返す男たちの声が聞こえた。
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