2026年5月4日月曜日

【小説】神崎教授の事件簿:EP.7 見えないルート(Unvisible Routes)

※AI(人工知能)と作った小説です。
【タイトル】神崎教授の事件簿
【内容】神崎教授が会話の中にあるヒントから事件を解決していくミステリー小説。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち):元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき):神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI):神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご):東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・佐藤波流(さとうはる):警視庁 サイバー犯罪対策課。東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。
・上条雷人(かみじょうらいと):元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。東京中央技術大学 情報工学科2010年卒の神崎教授の教え子。サイバーテロを計画し実行する。

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神崎教授の事件簿:EP.7 見えないルート(Unvisible Routes)

東京都北区の住宅街にある神崎の自宅。
「"見えないルート”って、どういう意味だ」、神崎がいう。
「犯人にしか見えないルートってことよ。
現時点でわかっていることを時系列で整理するわね。

1月に犯人は、スマホとビデオカメラを家電量販店で買っている。
2月に犯人は身代金要求動画を撮影、ビデオカメラを置いていった。
7月から8月にかけて、複数の会社のシステムをランサムウェアで停止させた。
その際、Wi-Fiスポットで、スマホに電源を入れて、動画を送信した」、YUKIがいう。

「その通りだが、どこが見えないんだ」、神崎がいう。
「1月にスマホとビデオカメラを家電量販店で買ったのも計算よ。
家電量販店で品物だけ買えば、身分証明は求められない。
つまり、買った場所はわかっても、誰が買ったかはわからないことになる。

その場合、街中や店にある防犯カメラの映像が決め手となる。
だけど、犯行が行われたのは、7月から8月なので、映像データは上書きされている。
常にスマホの電源を入れていれば、居場所を特定できる。
だけど、Wi-Fiスポットでしか電源を入れないので、居場所を特定できない」、YUKIがいう。

「確かに、通信会社と契約しなければ、身分証明は求められないな、
通信会社と契約していなくても、Wi-Fiスポットから動画を送信できる」、神崎がいう。
「犯人は、デジタルで身元を特定される場所では、デジタルを使わない。
アナログで身元を特定される場所では、アナログを無効化しているのよ。

つまり、デジタルとアナログを組み合わせたハイブリッド。
そのときの状況に応じて、使い分けているのよ。
犯人は、Wi-Fiスポットで、スマホに電源を入れて、動画を送信している。
おそらく、そこへの移動には防犯カメラの死角を選んでいると思うわ」、YUKIがいう。

「その使い分けであれば、点は特定できても、線は特定できないな」、神崎がいう。
「デジタルで身元を特定される場所では、デジタルを使わない。
アナログで身元を特定される場所では、アナログを無効化する。
これから行動するときも、このルールを使う可能性が高いわ」、YUKIがいう。

「なるほど、それで"見えないルート”か」、神崎がいう。
「おそらく、犯人は必要な防犯カメラの死角を調べていると思うわ」、YUKIがいう。
「じゃあ、犯人の次の動きを予測することは難しいな」、神崎がいう。
「犯人が動いてから、"見えないルート”を予測するしかないと思うわ」、YUKIがいう。

東京中央技術大学病院 データセンター専用棟。
データセンター専用棟は、地上5階、地下2階、延床面積12,000㎡の建物。
免震装置や巨大な冷却タンク、特高受電設備なども設置されていた。
基本設計には、神崎教授が関わっており、国内最先端のデータセンターだった。

外の病院の明かりはほとんど消えていた。
データセンター専用棟の中はファンによる轟音があり、静かな外とは異なっていた。
1階にあるスーパーコンピュータの前に御堂病院長がいた。
スーパーコンピュータはYUKIの本体で、神崎教授の自宅と専用回線で繋がっていた。

YUKIについて提案したのは、神崎教授だった。
AIに奥さんのことを学習させ、奥さんの脳に近づける。
得られたデータを、アルツハイマーの新薬研究に役立てて欲しいとのことだった。
御堂にとっては、貴重なデータが得られるため、願ってもない話だった。

だが、自分が勧めた治験で奥さんが亡くなったことを思うと、即答できなかった。
AIに奥さんのことを学習させても、人間にはなれない。
学習させているときに、そのことを思い知らされることになる。
自分だったら、耐えられないし、そのような提案を思いつかないだろう。

いつまでたっても返事をしないので、神崎教授が研究室へやって来た。
返事ができない理由について説明した。
理由を聞いた神崎教授はいった。
「御堂、君は勘違いしている。この提案は妻からの提案だ」

翌日から、アルツハイマー新薬研究プロジェクトが再始動した。
治験データ収集と並行して、YUKIのデータ収集も行う。
両方のデータを用いることで、症状を改善できる新薬を開発する。
再始動したプロジェクトの責任者は、開発できる可能性が最も高い迫田教授にした。

全ての苦労が水の泡になるかもしれないが、やるしかない。
腕時計の時刻は、あの事故が起こった23時になろうとしていた。
23時になったのを確認した御堂は、YUKIに向かって黙祷した。
黙祷を終えた御堂は。「よし」と気合を入れると、データセンター専用棟を後にした。

【小説】神崎教授の事件簿:EP.6 整った基盤(A Solid Foundation)

※AI(人工知能)と作った小説です。
【タイトル】神崎教授の事件簿
【内容】神崎教授が会話の中にあるヒントから事件を解決していくミステリー小説。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち):元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき):神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI):神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・佐藤波流(さとうはる):警視庁 サイバー犯罪対策課。東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。
・上条雷人(かみじょうらいと):元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。東京中央技術大学 情報工学科2010年卒の神崎教授の教え子。サイバーテロを計画し実行する。

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神崎教授の事件簿:EP.6 整った基盤(A Solid Foundation)

2010年1月、東京中央技術大学 情報工学研究室。
多くのモニターやコンピュータ機器が設置された部屋の中。
テーブルを挟んで、神崎教授と上条雷人が話し合っていた。
「どうして、この論文がダメなんですか」、添削された卒業論文を手にした上条がいう。

「その論文は、君の社会に対する考えをまとめたものだ。
誤解しないで欲しいが、決して君の社会に対する考えを否定するわけじゃない。
だが、君がここで学んだことをまとめるのが卒業論文だ。
まだ時間はあるので、君が学んだことを私に教えて欲しい」、神崎がいう。

「ここで学んだことを、どう生かすかが大事だと思います。
訂正しますが、一個人としての先生の意見を聞かせてください」、上条がいう。
「さっきもいったように、決して君の考えを否定するわけじゃない」、神崎がいう。
「答えになっていません、答えてください」、上条がいう。

現在の東京都北区の住宅街にある神崎の自宅。
神崎は、YUKIに今までにわかっていることを入力した。
「私のデータベースにあるのは、上条くんの訂正前の卒業論文なのね。
私の他にも、訂正前の卒業論文はあるのかしら」、YUKIがいう。

「上条は持っているだろうが、他にあるかはわからない」、神崎がいう。
「現在、わかっていることを整理するわね。
複数の会社が、ランサムウェアでシステムを停止され、身代金を要求された。
身代金を要求した人物は大場玲で、上条くんの可能性がある、

同一人物である可能性がある判断基準は、上条くんの訂正前の卒業論文。
このことを知っているのは、上条くんとあなたと私だけの可能性がある」、YUKIがいう。
「判断基準となる卒業論文の箇所を見せてくれ」、神崎がいう。
YUKIのモニターに、卒業論文の該当箇所が表示された。

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題目:社会構造の動態的更新におけるオーバーレイ・ネットワークの応用考察
提出者:東京中央技術大学 情報工学科 上条 雷人

【第1章:序論 - 社会の停滞とOSとしての制度】
現在の日本社会において、経済・政治・文化の各層で新陳代謝が停止している原因は、人間という「ハードウェア」の老朽化ではない。その上で動作する社会制度という「OS(オペレーティングシステム)」が、20世紀後半の仕様のまま固定(フリーズ)されていることにある。既存のシステムは、既得権益という名の「デッドロック」を引き起こしており、正規のプロセス(選挙、改革等)ではもはや再起動は不可能である。

【第3章:オーバーレイによる「実体の消失」と再定義】
物理的な基盤(アンダーレイ)を破壊することなく、その上に仮想的な制御層(オーバーレイ)を構築することで、下位層の制限を無視した高度な通信・制御が可能となる。これを社会構造に置換するならば、旧態依然とした法的・倫理的システムを物理的に破壊するのではなく、その上位に「ITによる新たなルール層」を強制的に重ね書き(オーバーレイ)することで、旧世代の実体を無効化、あるいは「消失」させることが可能である。

【第6章:結論 - 世代交代の強制執行】
本研究の結論として、ITは単なる利便性の追求ツールではなく、社会の「強制アップデート」のためのトリガーであるべきだ。もし既存のシステムがバージョンアップを拒むのであれば、外部からの「非連続な介入」によって、強制的にプロセスをキル(Kill)し、新世代のコードへと書き換える必要がある。2010年現在のネットワーク帯域および計算資源では、この「社会の上書き」を瞬時に行うには限界があるが、今後10年で基盤が整えば、一個人が論理的な一撃を加えるだけで、社会の重力圏の入れ替え(世代交代)を実現することが可能になるだろう。

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「2010年から最も基盤が整ったものは何だ」、神崎がいう。
「最も基盤が整ったのは"暗号資産"でしょうね。
2008年に、サトシ・ナカモトがビットコインの論文を発表。
2009年に、論文に基づくオープンソースのソフトウェアが公開されたわ。

2010年に、ピザとビットコインの交換などで、初めて、価値が認識された。
2020年代になると、投機対象から金融資産への転換が進んでいるわ」、YUKIがいう。
「そのことが、今回の件にどう影響するんだ」、神崎がいう。
「手に入れた身代金をマネーロンダリングできるわ」、YUKIがいう。

「マネーロンダリングできたとしても、そもそも身代金を払わないだろ」、神崎がいう。
「多くの会社が恐れるのは二次被害よ。
システムを停止されたことで、脆弱なセキュリティの会社だと思われる。
預かっている個人情報が第三者の手に渡っていると思われる。

それらが会社の業績に与える影響は大きいわ。
そう考えると、身代金を払って、被害届を出さない会社もあるんじゃない」、YUKIがいう。
以前、神崎は佐藤に、身代金を払った会社はあるのかと聞いたことがあった。
佐藤の答えは「先生が思っているより、多いと思います」だった。

「大場玲が上条だとすると、なぜ撮影スタジオにビデオカメラを忘れたんだ」、神崎がいう。
「忘れたんじゃないわ、わざと置いていったのよ。
置いていくことで、警察は動画を撮影した人物が大場玲だとわかる。
大場玲は、"日本社会をオーバーレイする"というメッセージよ」、YUKIがいう。

「大場玲が上条だとすると、次に何をする」、神崎がいう。
「手に入れた身代金を使って、世代交代を実現することに使うでしょうね」、YUKIがいう。
「具体的にどういうことが考えられる」、神崎がいう。
「わからないけど、”見えないルート"を使う可能性が高いわ」、YUKIがいう。

2026年5月3日日曜日

【小説】神崎教授の事件簿:EP.5 実体の消失(Overlay on the Entity)

※AI(人工知能)と作った小説です。
【タイトル】神崎教授の事件簿
【内容】神崎教授が会話の中にあるヒントから事件を解決していくミステリー小説。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち):元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき):神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI):神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・佐藤波流(さとうはる):警視庁 サイバー犯罪対策課。東京中央技術大学 情報工学科 2020年卒の神崎教授の教え子。
・上条雷人(かみじょうらいと):元米国IT企業「ダーウィンスペース」日本法人の社員。東京中央技術大学 情報工学科2010年卒の神崎教授の教え子。サイバーテロを計画し実行する。

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神崎教授の事件簿:EP.5 実体の消失(Overlay on the Entity)

東京都北区の駅前商店街。
佐藤は、昭和レトロな喫茶店「バロック」で、神崎が来るのを待っていた。
約束した時間ジャストにガラスドアが開き、ネクタイにスーツ姿の神崎が入ってきた。
神崎は店員にアイスコーヒーを注文すると、佐藤のテーブル席にやって来た。

「テーブルに到着したときの時間をジャストにするつもりだったが、ムリだったか」
そういって座った神崎の前に、店員がアイスコーヒーを置いた。
「お忙しいところ、お呼び立てして申し訳ありません」、佐藤がいう。
「その顔は何か困ったことがあったのか」、神崎がいう。

「先日、相談した事件の件で、相談があります。
先生にいただいたアドバイスを元に動画の撮影場所を特定しました。
撮影場所は、動画投稿者が利用したりする品川にある撮影スタジオでした。
動画と同じ部屋を借りた人物のリストを確認、誰が犯人か調べました。

その結果、驚くべきことがわかりました。
犯人は今年の2月に、撮影スタジオで動画を撮影していました。
7月から8月にかけ、複数の会社のシステムをランサムウェアで使えなくしました。
その際、品川の公共Wi-Fiスポットから、身代金要求の動画を送っています」、佐藤がいう。

「つまり、犯人は品川のスタジオで動画を撮影していた。
約半年後に、複数の会社のシステムを使えなくし、身代金を要求した。
そのときに送った動画は、品川のWi-Fiスポットからだったと」、神崎がいう。
「そうです。おかしいと思いませんか」、佐藤がいう。

「確かに、あらかじめ、動画を撮影しておくのは理解できる。
だが、犯人が品川から動画を送信する理由がわからないな。
品川から送信すると、撮影場所であるスタジオを特定されるリスクが高くなる。
ちなみにスタジオの借主の中から、どうやって犯人を特定したんだね」、神崎がいう。

「2月にスタジオを借りた人物の中に、忘れ物をしていた人物がいました。
忘れていたのは、動画撮影に使ったビデオカメラです」、佐藤がいう。
「なぜ、動画撮影に使ったビデオカメラだとわかったんだ」、神崎がいう。
「動画データを解析し、ビデオカメラと照合したところ、一致しました」、佐藤がいう。

「スマホとビデオカメラの入手経路はわかったのか」、神崎がいう。
「はい、どちらも今年の1月に秋葉原の家電量販店で購入しています」、佐藤がいう。
「街中の防犯カメラや店のカメラに犯人の映像は残っていないのか」、神崎がいう。
「警察の防犯カメラもですが、30日後には録画データは上書きされます」、佐藤がいう。

「動画を送信した端末のIMEIや、MACアドレスは確認できたのか」、神崎がいう。
送信場所近くの基地局とWi-Fiスポットの記録には残っていました。
ですが、そこ以外には記録されていませんでした」、佐藤がいう。
「犯人は動画を送信するときしか、電源を入れていないのか」、神崎が驚いていう。

「そういうことになります。現在、聞き込みを中心に捜査しています。
また、新たなことがわかったら、ご相談させてもらいます」、佐藤がいう。
「ちなみに撮影スタジオを借りた名前は本名だったのか」、神崎がいう。
「借りていたのは『大場玲(おおばれい)』、偽名でした」、佐藤がいう。

東京都北区の住宅街にある神崎の自宅。
帰宅した神崎が書斎に入ると、人感センサーにより、机の上のモニターが明るくなった。
「お帰りなさい。波流くんは元気だった」、AIのYUKIがいう。
「社会のオーバーレイについて書いた卒論があるので、要約してくれ」、神崎がいう。

「社会のオーバーレイの考察、2010年に上条雷人くんが書いた卒業論文ね。
"日本社会の問題が解決されないのは、世代交代が進まないことが原因。
世代交代を進めるためには、ITが必須となる。
だが、現在のITでは、技術的な課題がある"で終わっているわ」、YUKIがいう。

「現在のITなら、その論文にある課題は解決できるか」、神崎がいう。
「技術的には解決できるわ」、YUKIがいう。
「論文にある世代交代を進めることもできるか」、神崎がいう。
「できないことはないけど、長い時間が必要よ」、YUKIがいう。

「もし、最短で実現するとしたら、どういう方法がある」、神崎がいう。
「最短で実現するなら合法的な方法ではムリよ、非合法的な方法しかないわ」、YUKIがいう。
「非合法的な方法の場合、最初にすることは何だ」、神崎がいう。
「会社のシステムをランサムウェアで停止させ、身代金を手に入れることよ」、YUKIがいう。

「上条雷人に関する情報を教えてくれ」、神崎がいう。
「神奈川県川崎市出身。卒業後に米国のIT企業『ダーウィンスペース』日本法人に入社。
現在の連絡先や勤務先に関する情報はないわ。本名でのSNSアカウントもなし。
『ダークウェブ』には、本人である確率が50%以上のアカウントがあるわ」、YUKIがいう。

2026年5月2日土曜日

【小説】神崎教授の事件簿:EP.4 機械に存在しない解 (A Solution Beyond the Machine)

※AI(人工知能)と作った小説です。
【タイトル】神崎教授の事件簿
【内容】神崎教授が会話の中にあるヒントから事件を解決していくミステリー小説。
【登場人物】
・神崎零壱(かんざきれいいち):元東京中央技術大学 情報工学科の教授。日本の情報工学の第一人者で、インターネットの普及に貢献した。2020年に定年退職、現在は年金生活。子どもは独立、妻に先立たれてからは、東京都北区にある築40年以上の二階建て住宅で、妻の思考を学習させたAI(人工知能)と暮らしている。
・神崎悠季(かんざきゆき):神崎零壱の妻で結婚してからは専業主婦だった。2015年にアルツハイマーを発症。東京中央技術大学病院のアルツハイマー新薬研究プロジェクトの治験に参加するが、治験途中に亡くなる。看護師が気づけなかった投薬装置の故障による過剰投薬が原因と推測されたが、因果関係は不明。
・AI(YUKI):神崎零壱が神崎悠季の思考を学習させたAI。神崎零壱のことを誰よりも把握している。自宅にかかってきた電話に音声で対応、電話をかけることもできる。受信したメールに対する返信を作成して送信できるなどの機能も搭載している。
・御堂健伍(みどうけんご):東京中央技術大学病院の病院長。元アルツハイマー新薬研究プロジェクトの責任者。神崎零壱に神崎悠季の治験への参加を勧めたことに責任を感じている。
・華喜多美代子(はなきたみよこ):元東京中央技術大学病院の看護師。神崎悠季を故意に死亡させたと、世間からバッシングされ、退職を余儀なくされる。

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神崎教授の事件簿:EP.4 機械に存在しない解 (A Solution Beyond the Machine)

2018年10月1日23時、東京中央技術大学病院の治験病棟には4名の被験者がいた。
看護師の華喜多は、遮光カバーに覆われた点滴バッグを新しいものに交換していた。
点滴バッグに入っているのは、研究中の新薬「ADND310」。
アルツハイマーの症状を改善する画期的な新薬になると期待されていた。

「ADND310」は、毎時2ミリリットルで、被験者の体内にゆっくりと送り込まれていた。
神崎悠季の点滴バッグを新しいものに交換した華喜多は、輸液ポンプのドアを閉めた。
ドアの表面にある「注入中」を示す緑のランプが灯った。 
華喜多がベッドを見ると、神崎悠季は規則正しい寝息をしていた。

神崎悠季は、東京中央技術大学 情報工学科の神崎教授の奥さんだった。
看護師たちに、いつも気遣いの言葉をかけてくれる優しい女性だった。
華喜多は治験者たちの状態を測定している機器を確認、記録ノートに数値を書き込んだ。
数値を書き終えた華喜多が退室した後、神崎悠季の寝息が不規則になり始めた。

神崎悠季の輸液ポンプの内部では、経年劣化したプラスチックの爪がわずかにたわんでいた。 
本来なら、チューブを挟んで、流速を制御すべき部品が、わずかな隙間を作っていた。
流速の異常を検知するセンサーは故障しており、異常を知らせるアラームは鳴らなかった。 
「ADND310」は、設定の100倍近い速度で、彼女の体内へ流れ込んでいた。

翌朝、神崎悠季は帰らぬ人となっていた。 
治験は中止され、プロジェクトの責任者だった御堂教授はマスコミ対応に追われた。
多くのマスコミが、「看護師による故意の事故」という憶測を報道した。 
華喜多は刑事罰こそ免れたものの、憶測や誹謗中傷に耐え兼ね、病院を辞めた。

現在の東京都北区の住宅街。
帰宅した神崎は郵便箱を開けると、届いていた白い封筒を取り出した。
裏の送り主を確認すると、封筒を手にしたまま、玄関ドアのカギを開け、中に入った。
書斎に入ると、人感センサーが検知し、机の上のモニターが明るくなった。

「お帰りなさい」、AI(人工知能)のYUKIがいう。
「何かかわったことはあったか」、椅子に座りながら神崎がいう。
「御堂さんから、メールが届いているわ」、YUKIがいう。
「メールの内容は」、神崎がいう。

「文面は、最新の論文を送ります。ドイツの脳科学者の論文が添付してあるわ。
論文を読んだけど、人間の記憶を再現する実験結果みたいよ。
お礼の返信をしておきましょうか」、YUKIがいう。
「いや、後で私がする」、神崎がペーパーナイフで封筒を開封しながらいう。

「あらそう、じゃあお願いね」、YUKIがいう。
神崎は、封筒から便箋を取り出すと、読み始めた。
便箋には、時間をかけて書いたと思われる、整った文字が並んでいた。
神崎は、毎年、悠季の命日に送られてくる華喜多美代子からの手紙を読み始めた。

「あの日、私は点滴バッグをマニュアル通りの手順で交換しました。
ドアの『注入中』を示す緑のランプが灯ったことを確認しました。
私が室内にいるときに、異常を知らせるアラームは鳴りませんでした。
奥様の状態を測定していた機器の数値にも異常はありませんでした」

書き出しは毎年、同じで、機械の異常に気づけなかったことを詫びる文面だった。
彼女が病院を辞めてから、一度も会っていない。
毎年、届く手紙にも、一度も返事を出したことはない。
なぜ、返事できないのか、神崎はこの問題に取り組むことにした。

第三者の調査委員会による調査報告書を読んだが、偶然が重なった事故だった。
流速を制御すべき部品の経年劣化、検知センサーの故障。
どちらかが正常に機能していれば、事故が起きなかった可能性はある。
だが、当時と同じ状況を再現できないため、因果関係を立証できない。

したがって、亡くなった原因は、悠季が治験に参加したこと。
御堂が、私に悠季の治験への参加を勧めてくれた。
私が悠季に治験への参加を勧めた。
治験へ参加する前、私は同意書にサインした。

御堂や私に責任があったとしても、華喜多美代子には何の責任もない。
なら、なぜ返事しなかった。
そうか、返事することで、華喜多美代子を楽にしたくなかったのか。
神崎は、YUKIに華喜多美代子への返事を入力し始めた。

返事の入力を終え、プリンターの電源を入れようとした神崎にYUKIがいった。
「華喜多さんの責任じゃないし、御堂さんやあなたの責任でもない。
私が治験へ参加すると決めたんだから、私の責任よ。
でも、治験に参加したから、今、こうして話せてる。だから、みんな、楽になっていいわよ」