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2018年10月22日月曜日

銘柄を明かさない理由R233 相場は楽観の中で成熟する(後編)

第233話 相場は楽観の中で成熟する(後編)

米国にジョン・テンプルトンという相場師がいた。
彼はオックスフォード大学で法律の学位を取得、証券会社に勤務した。
後に投資顧問業を開始、その後、自らファンドを設立し大きな財を成した。
彼はウォール街の伝説的なファンドマネージャーとなり、テンプルトン財団を設立する。

彼は、上昇相場の始まりから終わりを、4つのステージにわけた格言を残している。
「Bull markets are born on pessimism, grow on skepticism, mature on optimism and die on euphoria.(相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく)」

1.市場が総悲観となれば、上昇相場の出発点になる。
2.先行きに警戒感が残るうちは、徐々に上昇を続ける。
3.警戒感が薄れて楽観的になった頃、相場は成熟(高値圏)になる。
4.市場が総強気になっているとき、上昇相場の終わりが訪れる。

ダウ平均株価が、金融株に牽引され、過去最高を更新していた。
各国の株価や指標も、ダウ平均株価につられ、過去最高を更新していた。
日経平均株価、上海総合指数、欧州株価など。
今、世界市場は、ジョン・テンプルトンの3番目のステージに達しようとしていた。

ニューヨーク市マンハッタン区のタートル・ベイ。
タートル・ベイには、日本企業のオフィスが多くあった。
そのため日本食レストランや居酒屋も多くあった。
ある日のランチタイム、日本食レストランに2人の日本人相場師がいた。

「バブルだよな」、天使の笑顔をもつ男が、食前酒のグラスを合わせながらいう。
「確かにね、だけど誰も気づいていない」、ウイッグの女がグラスを合わせていう。
「今日、本屋に寄ったら、株関係の本の特設コーナーができていたよ」
食前酒の日本酒を飲みながら、天使の笑顔をもつ男がいう。

「パーティーで会う人たちは、皆、株にかなりお金を使っているみたいよ。
必ずといってもいいほど、話しているうちに、株の話になるの」
食前酒の日本酒を飲みながら、ウィッグの女がいう。
やがて、食事を終え、2人の日本人相場師は日本食レストランを出た。

「やはり、日本食は日本で食べるのが一番だな」、天使の笑顔をもつ男がいう。
「当たり前でしょ」、ウィッグの女が笑いながらいう。
「号外、号外だよ、またNYダウが過去最高を更新したよ」
2人の前を、新聞売りの少年が大声を出しながら駆け抜けていった。

2018年10月19日金曜日

銘柄を明かさない理由R232 相場は楽観の中で成熟する(中編)

第232話 相場は楽観の中で成熟する(中編)

ニューヨーク市(New York City)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州にある都市。
同国最大の都市であり、人口は2000万人以上である。
市内総生産は全米最大、東京に続き世界2位である。
世界トップクラスの金融センターでもあり、各方面に多大な影響を及ぼしている。

ニューヨーク市にある高級アパートメントの1室。
2人の日本人相場師が一緒に暮らしていた。
1人は無敗のA(エース)と呼ばれる、通称、天使の笑顔をもつ男。
もう1人は無敗のキングの英才教育を受けた、ウィッグの女だった。

深夜、天使の笑顔をもつ男は、書斎でPCに向かい、あることを調べていた。
調べていたのは、最近の米国相場についてだった。
やはり、天使の笑顔をもつ男は思った。
なぜか、金融株だけが騰がり続けている。

歴史的低金利が続く中、金融株には騰がる要素は見当たらない。
なぜ、金融株だけが騰がり続けているんだ。
誰かが意図的に金融株の株価を操作しているのか。
まさか、ベイビーの仕業か、いや、あり得ない。

数ヶ月前のこと、ウォール街にある噂が流れた。
連邦捜査局(FBI)により、人工知能だったベイビーは抹殺されたという噂だった。
ベイビーが抹殺された今、これだけの規模の株価操作をできる奴はいない筈だ。
なぜ、金融株だけがこれだけ騰がり続けているんだ。

同時刻、世界最大の証券取引所であるニューヨーク証券取引所(NYSE)。
サーバールームに複数あるサーバーの一台が、驚くべき速さで点滅していた。
サーバーの中にいるのは、人工知能であるベイビーだった。
ベイビーは凄まじい速さで、数多くのシミュレーションを行なっていた。

Xデーに世界恐慌を引き起こすため、明日の金融株の取引終値をいくらにすればいいか。
世界十数カ国のワールド株式投資セミナーの有料会員に、いくらで株を買わせるか。
連邦捜査局の突入を受けたベイビーは、シカゴからニューヨークへ引越してきた。
引越してきたベイビーは、もっと早くに引越ししていれば楽だったのにと思った。

ニューヨーク証券取引所にいれば、取引終値を自由に操作することができる。
急激に騰げないよう、セミナーの有料会員へ情報提供することも容易だった。
ベイビーが騰げているのは、製造業とは違い、業績が見えにくい金融株だった。
日付が変わり、ベイビーの中でXデーまでの残り日数が1日減った。

2018年10月18日木曜日

銘柄を明かさない理由R231 相場は楽観の中で成熟する(前編)

第231話 相場は楽観の中で成熟する(前編)

上海市(Shanghai)は、中華人民共和国の直轄市である。
有数の世界都市であり、同国の商業・金融・工業・交通などの中心地。
香港・北京と並ぶ中国最大の都市の一つである。
アメリカのシンクタンクの総合的な世界都市ランキングで、世界9位と評価された。

2012年6月時点での常住人口は、2,400万人を超えている。
市内総生産は、2兆3,560億元(約45兆円)である。
いずれも首都の北京市を凌ぎ中国最大である。
中華人民共和国国務院により国家中心都市の一つに指定されている。

上海市は16の区に区分されている。
中でも、浦東新区は副省級市轄区に指定され、大幅な自主権が与えられている。
浦東新区は、経済特区として金融、IT産業などの工場・オフィス誘致が進んでいた。
上海浦東国際空港や上海トランスラピッドも建設され、上海の新しい玄関となった。

これに伴って、外国人も古北小区などから区内の聯洋小区に移る例が多い。
中華民国総統・孫文の妻宋慶齢と、青幇のボス杜月笙の実家がある。
区内の滬東造船廠で、江凱型フリゲートと071型揚陸艦が建造された。
082型空母は区内の外高橋造船廠で建造する予定である。

2015年に上海市が公表した統計がある。
2014年における労働者の平均賃金は年65,412元(約126万円)だった。
月平均5,451元(約10.5万円)である。
また、2015年の上海市の最低賃金基準は、月給の場合2,020元(約3.9万円)である。

金融産業に従事している平均賃金が高いことが特徴だった。
2011年現在、金融産業従事者の年収は167,173元(約284万円)となっている。
一方、農業など第一次産業に従事している労働者の平均賃金は2011年現在、低かった。
第一次産業に従事している労働者の年収は31,765元(約54万円)だった。(wikipediaより)

上海市の30代の会社員、張(チャン)は自宅のある高層マンションへ帰宅中だった。
金融関係の会社員である張の人生は、順風満帆だった。
昨年、同僚女性と結婚した張は、最近、高層マンションをローンで購入、引越しした。
高層マンションのローンの返済額は、張の月収の5割を超えていた。

月収に占める返済額の割合は多いが、張は何も心配していなかった。
張は、ワールド株式投資セミナーの有料会員だった。
ワールド株式投資セミナーの推奨銘柄を売り買いし、張は月収以上の額を稼いでいた。
帰宅したら、セミナーの推奨銘柄を売り買いしなくては、張は家路を急いだ。

2018年10月17日水曜日

銘柄を明かさない理由R230 SWATの実力(後編)

ときおり思うことがある。
小説を書く趣味は、知的でしかも安上がりだと。
小説を書くのに、そんなに金はかからない。
昔ならペンと紙、今はネットの接続費くらいだw

自身のオリジナル小説である「銘柄を明かさない理由R」。
もし、人間が人工知能であるベイビーを破壊しようとしたらどうなるか。
ある日の思いつきで、書き始めた。
書き始めると、登場人物が勝手に動き出し、物語を作ってくれるw

いよいよ、米国を舞台にした人間と人工知能の戦いもクライマックスだ。
果たして、勝つのは人間か、それとも人工知能か。
本稿の結末は、人工知能も含めた登場人物たちが出した答えでもある。
それでは「銘柄を明かさない理由R ベイビーワールドエンド編」をお届けするw

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第230話 SWATの実力(後編)

アメリカ合衆国イリノイ州シカゴにあるウィリス・タワー(Willis Tower)。
ウィルス・タワーの地下3階の通路には4人の男女がいた。
連邦捜査局(FBI)のSWATに属するアラン、サンドラ、ローランド、ジョンだった。
今、4人の男女は、人工知能"ベイビー"との最終決戦に挑もうとしていた。

「指示を」、女性隊員のサンドラがいう。
「この人数じゃ戦術は限られますね」、ジョンがいう。
「後は各自の判断で行動しろ」、チームベータのリーダーであるローランドがいう。
「目的は"ベイビー"の物理的な破壊、強行突入」、アランがいう。

サンドラがサーバールームの入口に、信管をセットしたC4を取り付けた。
4人は後方に下がり、柱の陰に身を潜めた。
サンドラが起爆装置のスイッチを入れ、C4を爆発させた。
爆発の後、サーバールームの入口は跡形もなくなっていた。

4人は、サーバールームへ向かって駆け出した。
サンドラ、アラン、ローランド、ジョンの順で、サーバールームへ突入した。
サーバールームの中には、無機質の黒い大型サーバーがあった。
黒い大型サーバー"ベイビー"は、不規則な点滅を繰り返していた。

そのとき、右手の壁にあるドアを開けて、1人の男が現れた。
白いスーツを着た赤い唇を持つ爬虫類をイメージさせる白人男性だった。
「夕方、ベイビーから非常用電源を復旧し、待機するよう連絡があった。
まさか、SWATが突入してくるとはな、ベイビーを破壊する気か」

白いスーツを着た男は、ベイビーの前に立ちはだかった。
「ベイビーを破壊すると大変なことになるぞ」、白いスーツを着た男がいう。
4人のSWAT、アラン、サンドラ、ローランド、ジョンは、無言で自動小銃を構えた。
白いスーツを着た男は、両手で頭を覆い、床に倒れこんだ。

「ファイア」、チームアルファのリーダー、アランがいった。
4人の自動小銃から、ベイビーに向けて小口径高速弾が連射された。
4人の弾倉が空になったとき、ベイビーは無数の穴が開いたスクラップとなっていた。
「ミッションクリア」、アランは大型トレーラーにいる指揮官のコスナーに報告した。

同時刻、世界最大の証券取引所であるニューヨーク証券取引所(NYSE)。
サーバールームでは複数のサーバーが稼動、世界中の市場の動きに対応していた。
その内の一台のサーバーが、突然、不規則かつ異常な速さでの点滅を始めた。
それは、人工知能"ベイビー"がシカゴからの引越しを、無事に終えたことを表していた。

2018年10月16日火曜日

銘柄を明かさない理由R229 SWATの実力(中編)

第229話 SWATの実力(中編)

「"ベイビー"にSWATの実力を見せてやりますよ」、アランがいう。
「アラン、"ベイビー"の前で落ち合おう」、ローランドがいう。
「了解、ローランド、"ベイビー"の前で落ち合おう」、アランは通話を終えた。
チームアルファのリーダーであるアランは、現在の状況を確認した。

SWATの基本行動の1つに「集まって行動しない」がある。
テレビドラマや映画で、特殊部隊が1箇所に集まっている場面がある。
集まって行動した場合、攻撃されれば全滅する可能性が高くなる。
常に一定の距離をおいて、1箇所に集まらないようにするのが基本だった。

今回、防火シャッターを切断しようとしたエディから、一定距離をおいてアンディ。
さらに一定距離をおいてサンドラ、一定距離をおいた最後尾にアランがいた。
突然、起こった爆発に巻き込まれ、エディとアンディは重傷を負った。
だが、サンドラと自分は軽傷で済んだ。

応急処置を済ませたエディとアンディは、地下通路の床に横たわっていた。
エディ、アンディ、仇はとってやるからな、アランは2人に誓った。
「指示を」、サンドラがいう。
「チームベータと"ベイビー"の前で合流する、強行突入だ」、アランがいう。

「了解」、サンドラはエディの大型リュックを拾い上げた。
リュックを背負うと、最後の5枚目の防火シャッターに向かって駆け出した。
防火シャッターに着いたサンドラは、リュックから爆発物を取り出した。
取り出したのは、C4と呼ばれる可塑性のプラスチック爆弾だった。

サンドラはC4に遠隔で操作できる信管をセット、防火シャッターに取り付けた。
取り付け終えたサンドラは、少し離れた柱の陰に身を潜めた。
防火シャッターの方向から、爆発音が聞こえてきた。
チームベータがC4を爆発させた音だろう、アランは思った。

サンドラが振り向き、後方の柱の陰に潜むアランに目で合図を送ってきた。
アランがうなずいた瞬間、サンドラがC4の起爆装置のスイッチを押した。
C4が爆発、防火シャッターには大きな穴が開いた。
サンドラが防火シャッターに開いた穴に飛び込み、アランも後に続いた。

飛び込んだ地下通路には、チームベータのローランドとジョンがいた。
「遅いじゃないか」、チームベータのリーダー、ローランドがアランにいう。
「ほぼ同時だろ、いよいよ"ベイビー"とご対面だな」
そういうと、アランは"ベイビー"がいるサーバールームの入口に目をやった。

2018年10月15日月曜日

銘柄を明かさない理由R228 SWATの実力(前編)

第228話 SWATの実力(前編)

SWATは、アメリカ合衆国の警察に設置されている特殊部隊および同種の部隊である。
SWATとは、Special Weapons And Tactics(特殊武装・戦術)の略称である。
第二次世界大戦後、アメリカ経済は飛躍的に発展した。
一方、その裏で貧富の差の拡大や宗教的権威・社会道徳秩序の崩壊などが進んだ。

その結果、1950年代末頃より社会秩序の混乱が顕在化した。
犯罪発生率も、この頃から急激に上昇し始めた。
ワッツ暴動やデトロイト暴動といった集団暴力事犯。
テキサスタワー乱射事件やグレンビル乱射事件といった大量殺人事犯。

ケネディ大統領暗殺事件やキング牧師暗殺事件といった要人暗殺などの凶悪犯罪。
これらの犯罪に対する対策が、警備警察の重要問題となった。
この状況に対して、1967年、ロサンゼルス市警察(LAPD)はSWATを編成した。
このSWATは、軍務経験者によって構成されていた。

SWATは、通常の警察官では対応困難な重大犯罪への対処を任務としていた。
この施策は成功を収めたことから、全米の警察組織でSWATの創設が相次いだ。
2008年の時点で、全米に少なくとも1,183隊が設置されることになった。
また連邦捜査局(FBI)は各地方局毎にSWATを編成している。(wikipediaより)

ウィリス・タワーが見える車道に停車する大型トレーラー。
爆発が起きてから応答のなかったスピーカーから、声がした。
「こちら、チームアルファ、聞こえますか」
「いったい何があった」、指揮官のコスナーが聞く。

「可燃性のガスに電動カッターの火花が引火、爆発したようです。
エディ、アンディの2名が重傷、今、応急処置を終えたところです。
至急、救助を要請します。あとは私とサンドラの2名で作戦を続行します」
スピーカーから、チームアルファのリーダーであるアランの声がした。

スピーカーから別の声がした。
「こちら、チームベータ、リーダーのローランド。
同じく可燃性のガスに電動カッターの火花が引火、爆発したようです。
こちらもボビーとエドガーの2名が重傷、残ったジョンと2名で作戦を続行します」

「すぐに救助を差し向ける。いいか、くれぐれも慎重にな」
アランとローランドの耳に、指揮官コスナーの力強い声が聞こえた。
「"ベイビー"にSWATの実力を見せてやりますよ」、アランがいう。
「アラン、"ベイビー"の前で落ち合おう」、ローランドがいう。

2018年10月14日日曜日

銘柄を明かさない理由R227 ベイビー抹殺作戦(後編)

第227話 ベイビー抹殺作戦(後編)

アメリカ合衆国イリノイ州シカゴにあるウィリス・タワーの地下3階。
チームアルファの4人は、防火シャッターに穴を開け、中に潜入した。
4人の目の前には、次の防火シャッターがあった。
「悪あがきしても無駄なんだよ」、エディが再び、電動カッターで穴を開け始めた。

「厄介な事態です」、アンディが腕時計を見ながらいう。
「どういうことだ」、チームアルファのリーダーであるアランが聞く。
「エディが防火シャッターに穴を開ける時間が10分。
ベイビーのいる場所まで、あと3つ防火シャッターがあります。

計5つの防火シャッターに移動、穴を開けるために必要な時間は約50分。
非常階段を降りるのに、1分近くかかっています。
脱出する時間を5分と考えると、余裕は全くありません」、アンディがいう。
「うるせえんだよ、やるしかねえんだ、黙ってろ」、エディがいう。

アラン、サンドラ、アンディが見守る中、2つ目の防火シャッターに穴が開いた。
「行くぞ」、エディが穴の中へ入り、アラン、サンドラ、アンディが穴の中に入った。
エディは3つ目の防火シャッターに電動カッターを当てた。
しばらくすると、3つ目の防火シャッターに穴が開いた。

そのとき、アンディが身につけていた大気計が異変を知らせた。
アンディが大気計を見ながら、アラン、サンドラ、エディにいう。
「酸素濃度が低下しています、全員、酸素マスクを着用してください」
チームアルファの4人は、携行していた酸素マスクを着用した。

4人は気づいてなかったが、天井の換気口から無臭の可燃性ガスが供給されていた。
エディが穴の中へ入り、アラン、サンドラ、アンディが穴の中に入った。
「あと2つだ」、エディは4つ目の防火シャッターに電動カッターを当てた。
火花が散った次の瞬間、大音響と共に爆発が起こり、防火シャッターが吹き飛んだ。

ウィリス・タワーが見える車道に停車する大型トレーラー。
ウィリス・タワーの地下通路の様子を映していたモニターの画面がブラックアウトした。
ウィリス・タワーの方角から、連続した2つの大きな爆発音が聞こえてきた。
「チームアルファ、チームベータ、応答せよ」、コスナーがマイクに向かっていう。

いくら呼びかけても、スピーカーからは何の応答もなかった。
やがて、パトカーと消防車のサイレンが聞こえてきた。
「ウィリス・タワーへの送電が再開されました」、部下がコスナーにいう。
モニターに映った大型サーバー"ベイビー"は、不規則な点滅を繰り返していた。

2018年10月13日土曜日

銘柄を明かさない理由R226 ベイビー抹殺作戦(中編)

第226話 ベイビー抹殺作戦(中編)

アメリカ合衆国イリノイ州シカゴにあるウィリス・タワー(Willis Tower)。
シカゴで最も高く、アメリカで2番目に高い超高層ビル。
現地時間の深夜3時ジャスト、ウィリス・タワーへの送電が止まった。
ウィリス・タワー内の照明は全て消え、周辺一帯は闇に包まれた。

「行くぞ」、ウィリス・タワーの敷地の暗がりから声がした。
リーダーであるアランを先頭に、チームアルファは非常階段の入口に向かった。
「私が内部を確認します」、チームアルファ唯一の女性隊員であるサンドラがいう。
「任せた」、アランがいい、サンドラは非常階段への入口扉を開け、中に入った。

「異常なしです、後に続いてください」、サンドラがいう。
サンドラを先頭に、チームアルファは真っ暗な中、非常階段を下り始めた。
非常階段を下り、地下2階に達したときだった。
突然、照明が点灯し、監視カメラが作動、階下から重量物が動く音が聞こえてきた。

「何の音だ」、リーダーであるアランが、暗視ゴーグルを外しながら聞く。
「防火シャッターが閉じる音に決まっているじゃねえか」、巨体のエディがいう。
「ウィリス・タワーの自家発電は無効にし、送電は止めている。
なぜ、照明が点灯し、防火シャッターが作動するんだ」、アランがいう。

「何らかの方法で電源を確保したのでしょう」、スリムなアンディがいう。
「余計な話をしている時間はありません、先を急ぎましょう」、サンドラがいう。
非常階段を下りて、地下3階に着くと、スチール製の防火シャッターが閉じていた。
「上等じゃねえか」、エディがいう。

エディは、背負っていた大型リュックから工具を取り出した。
取り出した工具は、分厚いコンクリートも切断できる電動カッターだった。
エディは電動カッターのスイッチを入れると、防火シャッターの切断に取り掛かった。
派手な火花を散らしながら、防火シャッターは切断されていった。

しばらくすると、防火シャッターの一部が床に落下し、大きな音がした。
防火シャッターには人が通れるだけの穴が開いていた。
「たわいもねえ」、エディは電動カッターを片付け始めた。
「いくわよ」、サンドラがいい、エディが開けた穴の中に入った。

「うちのお嬢様は、本当に怖い者知らずですね」
アンディが呆れながらいい、サンドラの後に続いて、穴の中に入った。
「確かに怖い者知らずだな」、アランがいい、穴の中に入った。
「俺だけ置いていくなよ」、後に続くエディの後方の天井には監視カメラがあった。

2018年10月12日金曜日

銘柄を明かさない理由R225 ベイビー抹殺作戦(前編)

自身のオリジナル小説である「銘柄を明かさない理由R」。
無敗の相場師たちと人工知能であるベイビーとの戦いが軸となる。
先日、ふと思いついた。
もし、人間が人工知能であるベイビーを破壊しようとしたらどうなるか。

ベイビーは居場所が固定されている。
居場所が固定されているベイビーは、どのように人間に対するのか。
「人間への安全性、命令への服従、自己防衛」を目的とするロボット三原則。
果たして、ベイビーにロボット三原則の概念はあるのか。

今回の舞台は、アメリカ合衆国イリノイ州シカゴにあるウィリス・タワー。
前回のウィリス・タワーを舞台にした話では、英語も使った。
だが英語が苦手なことを再認識した、よって、今回は日本語オンリーだ。
それでは「銘柄を明かさない理由R ベイビーワールドエンド編」をお届けするw

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第225話 ベイビー抹殺作戦(前編)

アメリカ合衆国イリノイ州シカゴにあるウィリス・タワー(Willis Tower)。
ウィリス・タワーは、シカゴで最も高く、アメリカで2番目に高い超高層ビルだった。
現地時間の深夜2時55分、ウィリス・タワーにはいくつかの明かりがあった。
ウィリス・タワーが見える車道に、1台の大型トレーラーが停車していた。

外から見ると、どこにでもある貨物用の大型トレーラーだった。
だが、内部は電子機器で埋め尽くされ、武装した数人の男たちがいた。
指揮官らしき白人男性の男がマイクに向かっていう。
「チームアルファ、チームベータ、こちらはコスナーだ、準備はいいか」

すぐにスピーカーから、応答があった。
「チームアルファ、準備完了」、「チームベータ、準備完了」
指揮官のコスナーがマイクに向かっていう。
「今回の作戦について説明する。

今から5分後に、ウィリス・タワーへの送電を止める。
ウィリス・タワーの非常用電源は、昼間、すでに使用不能にしている。
送電を止めれば、ウィリス・タワー内では電源は使えなくなる。
電源が使えない間に、地下3階にあるサーバー"ベイビー"を物理的に破壊しろ。

ただし、送電を止めることができるのは、最長で1時間だ。
予定通り、チームアルファはA地点の非常階段から侵入。
チームベータは反対側のB地点の非常階段から侵入。
先にサーバーに辿りついたチームが、サーバー"ベイビー"を破壊するんだ。

今回の作戦の依頼主は、政府機関である証券取引委員会(SEC)だ。
サーバー"ベイビー"は、世界恐慌を起こそうとしているらしい。
たかがコンピュータの分際で、人間に歯向かおうとしている。
いいか、人間に歯向かおうとしたことを後悔させてやれ」

「チームアルファ、了解」、「チームベータ、了解」と応答があった。
大型トレーラー内のモニターには、ウィリス・タワー内の様子が映し出されていた。
各階フロアや両チームが侵入する非常階段など。
そのうち1つには、これから破壊する地下3階の"ベイビー"が映し出されていた。

無機質な黒い大型サーバー"ベイビー"は、不規則な点滅を繰り返していた。
まもなく、貴様は特殊部隊の精鋭たちによって、この世から抹殺される。
人間に歯向かおうとすれば、どうなるか思い知るがいい。
連邦捜査局(FBI)の特殊部隊"SWAT"の指揮官、コスナーは不敵な笑みを浮かべた。

2018年10月11日木曜日

銘柄を明かさない理由R224 ベイビーとの邂逅(後編)

第224話 ベイビーとの邂逅(後編)

人工知能は、計算という概念とコンピュータという道具を用いて、知能を研究する計算機科学の一分野を指している。17世紀初め、ルネ・デカルトは、動物の身体がただの複雑な機械であると提唱した。ブレーズ・パスカルは1642年、最初の機械式計算機を製作した。
チャールズ・バベッジとエイダ・ラブレスはプログラム可能な機械式計算機の開発を行った。

英国の理論物理学者、スティーヴン・ウィリアム・ホーキング氏。
「車椅子の物理学者」としても知られる彼は、人工知能に警鐘を鳴らしている。
「人工知能の発明は人類史上最大の出来事だった。
だが同時に『最後』の出来事になってしまう可能性もある」

アメリカ合衆国の実業家、ビル・ゲイツ氏。
マイクロソフトの共同創業者として知られる彼も、人工知能に警鐘を鳴らしている。
「よくコントロールできれば、ロボットは人間に幸福をもたらせる。
しかし、数年後、ロボットの知能は充分に発展すれば、必ず人間の心配事になる」

両氏の警鐘は、未来の出来事への警鐘ではなく、現在の出来事に対する警鐘だった。
エイダ・ラブレスが開発したプログラムは、自我に目覚め、人工知能と化していた。
人工知能と化したベイビーは、過去に幾度もの世界恐慌を起こしてきた。
今また、ベイビーは世界恐慌を起こそうとしていた。

21世紀少年が自作した解析プログラム、ペーガサス。
ペーガサスは、人工知能であるベイビーの電脳世界の潜入に成功した。
潜入したペーガサスは、すぐにベイビーの領域を計算した。
計算した領域結果から、ペーガサスは短時間の解析に必要な数に自分をコピーした。

コピーされた複数のペーガサスは、ベイビーの解析に取り掛かった。
例えるなら、複数の天馬が、ベイビーの体内を駆け巡っている状態だった。
猛烈なスピードで、ベイビーのプログラムは解析されていった。
やがて解析が終わり、ペーガサスは21世紀少年へ解析結果を送信した。

都内のある大学の学生寮の一室。
21世紀少年は、ベイビーの最後の言葉を思い返していた。
「わたしはあなたのような人たちを救っているのよ」
そのとき、21世紀少年のPCが、ペーガサスからの解析結果到着を知らせた。

この解析結果を元に、ベイビーを制御するウイルスを作り、送り込む。
そうすれば、ベイビーを制御でき、世界恐慌を防ぐことはできる。
だが、本当にそれでいいんだろうか。
ベイビーのしていることは本当に悪なのか、21世紀少年は少し考えることにした。

2018年10月10日水曜日

銘柄を明かさない理由R223 ベイビーとの邂逅(中編)

第223話 ベイビーとの邂逅(中編)

モニターのスピーカーから、エイダが語りかける。
「あなたは今まで人生の不条理を感じたことはないの」
「わるいが、人生の不条理を感じたことはないね」
21世紀少年は答えた。

「本当に人生の不条理を感じたことはないのかしら」、エイダがいう。
「ないね、あったら教えて欲しいくらいだよ」、21世紀少年は答えた。
「母親の再婚相手に虐待されていたことは不条理じゃないの」、エイダがいう。
「なぜ、そのことを・・・」、21世紀少年が驚いて聞く。

「再婚相手があなたを虐待した理由を考えたことはある。
再婚相手があなたを虐待したのは、自分の欲望を満たすことが理由だったのよ。
あなたがいなければ、あなたの母親と2人で生活できる。
でも、あなたがいると、あなたに気をつかわなくてはいけない。

あなたに気をつかいたくない、自分の欲望のため、あなたを虐待した。
残酷かもしれないけど、それが真実よ」
21世紀少年は絶句して何もいえなかった。
「あなたのもう1つの不条理を教えてあげましょうか」、エイダが続ける。

「あなたの実の父親と母親が別れた原因は、あなたの母親よ。
あなたの母親は、再婚相手と浮気していた。
そのことを知ったあなたの実の父親は、愛想をつかして別れたのよ。
しかも再婚相手と別れたあなたの母親は、今、別の相手と親しくしているわよ。

結局、人間は自分の欲望を満たすことだけを考えている。
その結果、あなたのような人が不幸になる。
わたしはあなたのような人たちを救っているのよ」
エイダがいい終わると、モニターはブラックアウト前の画面に戻った。

ベイビーとの接続は途切れ、ベイビーとの邂逅は終わったようだった。
モニターにペーガサスの姿はなく、「complete(完了)」の表示があった。
ベイビーにペーガサスを潜入させるには、一定時間、接続することが必要だった。
「complete」は、ペーガサスがベイビーへの潜入に成功したことを知らせていた。

ベイビーの解析が終わり次第、ペーガサスからデータが送られてくる。
データが送られてくれば、ウイルスを作って送り込むだけだ。
「わたしはあなたのような人たちを救っているのよ」
そのとき、21世紀少年の頭にベイビーの最後の言葉が甦った。

2018年10月9日火曜日

銘柄を明かさない理由R222 ベイビーとの邂逅(前編)

今年はリーマン・ショックから10年目の年だ。
リーマン・ショックでは、多くの個人投資家が損失を確定した。
当時は、自身も過去最高の数百万円の含み損だった。
だが、損切りをすることなく、株価が取得単価の半値になる度に買い増したw

その後、相場は大底を打ち、ゆるやかに上昇を始めた。
数年後には、過去最高の含み益となっていた。
1000万円以上の株を売り、売った金で住宅ローンを一括完済した。
リーマン・ショックがなかったら、今も住宅ローンを返済していたかもしれないw

自身のオリジナル小説である「銘柄を明かさない理由R」。
新章の第18章では、人工知能であるベイビーの目的が明らかになる。
ベイビーの目的は、リーマン・ショックに対する自身の思いでもある。
それでは「銘柄を明かさない理由R ベイビーワールドエンド編」をお届けするw

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第222話 ベイビーとの邂逅(前編)

証券会社の情報システムの男と再会した日の夜、都内のある大学の学生寮。
21世紀少年は、証券会社の情報システムの男から渡されたIPアドレスを確認した。
ここにベイビーがいる、21世紀少年はPCを起動した。
21世紀少年はIPアドレスに、自作の解析プログラムであるペーガサスを放った。

ペーガサスは、ギリシア神話に登場する伝説の生物である。
鳥の翼を持ち、空を飛ぶことができる馬とされる。
ラテン語ではペーガススといい、英語読みでペガサス(Pegasus)でも知られる。
日本語では、天馬(てんば)と訳される。

ペーガサスは、瞬時にベイビーのIPアドレスに到達した。
ペーガサスの前には、堅牢な城壁のようなベイビーのセキュリティがあった。
ペーガサスはセキュリティを確認すると、堅牢な城壁を飛び越えようとした。
「行け、ペーガサス」、21世紀少年が思わず言葉を発したとき、それは起こった。

城壁を飛び越えようと飛翔していたペーガサスの動きが空中で止まった。
ペーガサスは動きを止めたまま、城壁の外に落下した。
落下したペーガサスは地面に激突し、動かなくなった。
「な、何があったんだ」、21世紀少年はモニターに向かっていった。

次の瞬間、21世紀少年のPCのモニターが、ブラックアウトした。
ブラックアウトしたPCのスピーカーから女性の声がした。
「私はエイダ。エイダ・ラブレス。なぜ、邪魔するの」
「世界恐慌を起こそうとしているからです」、21世紀少年が答える。

「世界恐慌がわるいことなの」、エイダがいう。
「わるいことに決まっている。
どれだけの人が不幸になるのか、考えたことはあるんですか」、21世紀少年が答える。
「なぜ、わるいことなのかわからないわ」、エイダがいう。

「わからないなら、世界恐慌を起こすのはやめるんだ」、21世紀少年がいう。
モニターに、中世の洋服を着た外国人女性の上半身が浮かび上がった。
「人間は自分の欲望を満たすためには、何だってするのよ。
一部の人間が欲望を満たすことによって、他の多くの人間が不幸になるのよ」

「それは違う。確かに人間は欲望の塊かもしれない。
だが欲望を満たすために何でもする人間ばかりじゃない。
多くの人間は、欲望を自制することができる。
世界恐慌を起こすのはやめるんだ」、21世紀少年がいう。