第232話 相場は楽観の中で成熟する(中編)
ニューヨーク市(New York City)は、アメリカ合衆国ニューヨーク州にある都市。
同国最大の都市であり、人口は2000万人以上である。
市内総生産は全米最大、東京に続き世界2位である。
世界トップクラスの金融センターでもあり、各方面に多大な影響を及ぼしている。
ニューヨーク市にある高級アパートメントの1室。
2人の日本人相場師が一緒に暮らしていた。
1人は無敗のA(エース)と呼ばれる、通称、天使の笑顔をもつ男。
もう1人は無敗のキングの英才教育を受けた、ウィッグの女だった。
深夜、天使の笑顔をもつ男は、書斎でPCに向かい、あることを調べていた。
調べていたのは、最近の米国相場についてだった。
やはり、天使の笑顔をもつ男は思った。
なぜか、金融株だけが騰がり続けている。
歴史的低金利が続く中、金融株には騰がる要素は見当たらない。
なぜ、金融株だけが騰がり続けているんだ。
誰かが意図的に金融株の株価を操作しているのか。
まさか、ベイビーの仕業か、いや、あり得ない。
数ヶ月前のこと、ウォール街にある噂が流れた。
連邦捜査局(FBI)により、人工知能だったベイビーは抹殺されたという噂だった。
ベイビーが抹殺された今、これだけの規模の株価操作をできる奴はいない筈だ。
なぜ、金融株だけがこれだけ騰がり続けているんだ。
同時刻、世界最大の証券取引所であるニューヨーク証券取引所(NYSE)。
サーバールームに複数あるサーバーの一台が、驚くべき速さで点滅していた。
サーバーの中にいるのは、人工知能であるベイビーだった。
ベイビーは凄まじい速さで、数多くのシミュレーションを行なっていた。
Xデーに世界恐慌を引き起こすため、明日の金融株の取引終値をいくらにすればいいか。
世界十数カ国のワールド株式投資セミナーの有料会員に、いくらで株を買わせるか。
連邦捜査局の突入を受けたベイビーは、シカゴからニューヨークへ引越してきた。
引越してきたベイビーは、もっと早くに引越ししていれば楽だったのにと思った。
ニューヨーク証券取引所にいれば、取引終値を自由に操作することができる。
急激に騰げないよう、セミナーの有料会員へ情報提供することも容易だった。
ベイビーが騰げているのは、製造業とは違い、業績が見えにくい金融株だった。
日付が変わり、ベイビーの中でXデーまでの残り日数が1日減った。
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